おにぎり?

「…なまえの髪、綺麗だね」
「え?レイチェルの方が綺麗だよ。いいよね、金色の髪って」
「…私は、なまえの方がいいな」
「えー?だって、こんな真っ黒な髪、お化けみたい」
「おい喧嘩売ってんのか?あ?」
「別にザックのこと言ってないし」

鎌を振り上げたザックの後ろに回り膝かっくんをする。効果は抜群だ!
ぴくぴくと口端を引くつかせたザックにやれやれという風にレイチェルが首を振った。

「…ザック、なまえは別にザックのことを言った訳じゃない」
「そうだよ、私はレイチェルみたいな色が良かったって言ってるだけじゃん」
「…」
「それに、私はともかく、ザックは黒髪似合ってるよ」
「………おー」

レイチェルの髪を三つ編みしながらちらりとザックを見ると、鎌で肩を叩きながら何やら頬を掻いてそっぽを向いていた。なんだよ人が折角フォローしてやってんのに。
ザックはしきりに私達の方をちらちらと見ては、あー、だかうー、とか唸っている。
レイチェルの髪、さらさらだなー。

「……お、」
「お?おにぎり?」
「違ぇよバーカ」
「ザックにだけは言われたくないと思う」
「んだとコラ」
「結局何よ。おが何よ」

茶々入れて悪かったと思ってるよ。だからレイチェルの髪引っ張らないで傷む。
レイチェルはいつもの死んだ目にどこか呆れを含ませた色でザックを見つめている。

「…お、…お前も、……悪かねぇぞ…」
「え、何?」
「ううううるせぇ殺すぞ!?」
「唐突な殺害予告が私を襲う!」
「ザック、そういうこと言うから伝わらないんだよ。何だかんだ言ってなまえも馬鹿だから」
「レイチェル今なんて?」
「別に…」

ちょっとレイチェルの黒い一面を見てしまった気がするけど気のせいだよね。レイチェルマジ天使!

「ちゅーかザックって何気にスタイルいいよね。背高いし。足細いし。女かっ」
「…はぁ?」
「いいよねー、私足太いし、顔なんて見てらんないし…はっ、もしかして、この中で顔面偏差値低いの私だけ!?」
「…べ、別にそんなこと」「大丈夫、なまえの方が可愛い」「おいレイテメェ」
「やめろレイチェルを殴ることは私が許さん」

はいザックに膝かっくん二回目ー。駄目だ、全然駄目だ!女子に暴力を振るうことは私が許さんぞ。
というか今の会話の中のどこにレイチェルを殴る要素があった。ザックってもしかして不思議系?

「もー、何でレイチェル殴るのさー。あーはいはいザックもイケメンイケメン」
「い、いけめん…」
「何で目逸らすの、地味に傷付く」
「…ザックもまだまだだね」
「レイチェル、そんな顔しないの」

さっきからレイチェルの顔が地味に怖い。十三歳がする顔じゃない。
そしてザックどうした。今度は壁か。壁を壊したいのか?頭突きじゃちょっときついと思うよ…。

「もう、ザック子供かよ。私より年上でしょ?」
「…なまえ、何歳なの?」
「私?私は十七だよ。ザックよりは下」
「……年下…」

ザックがまた壁に頭を打ち付け始めた。そろそろ壁が崩れそうなので、レイチェルと一緒に安全な場所に避難しようと思う。

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