05

「テツ何かあったのか?」


練習後に青峰君が彼に似合わない心配そうな顔して覗き込んできた。

「いえ、別に…」

彼に背を向けて着替えをはじめた。
背後から暴力的に青峰君の視線を感じる。

「黒子ちょっと良いか」

着替え終わってカバンを手にしたところで赤司君に呼びとめられた。

「今日のパスは何だったんだ?全然気持ちが入っていなかった。他のことを考える余裕があるなら真面目に練習に取り組め」

「悩んでることがあるなら聞くっスよ?」

「そうだ。いつもと違うとこっちまで調子狂う」

みんなに心配されていて嬉しいような心臓がむずむずする。息が詰まる。
青峰君が立ったまま下を向いて動かなくなったボクの手を引いて、ベンチに座った。

「テーツ…」


「…その。…黙ってるつもりはなかったんですが、父親が再婚しそうなんです」



「「「「「は!!?」」」」」



ロッカールームにいた全員の声が揃い部屋全体に響いた。


「え…テツの親って離婚してたのか?」

「青峰っち失礼っスよ!!!黒子っちって片親だったんスね…」

「全然知らなかったのだよ」

慌てて取り繕う姿が少し面白かった。
そうなのだ。きっと2週間後の食事会に行けば再婚の話を持ち出される。
ボクは母親の記憶があまりないから今更母親になる人がきてもどう接すれば良いのか分からない。
“お母さん”と呼べる自信はないし、再婚を喜ぶことももしかしたら出来ないかもしれない。
父親とまともに会話をすることもできないのに…。
それにきっとボクに気付いてくれないだろう。

親が離婚をしていて父親に育ててもらったことと、2週間後に食事会があることをみんなに話した。

「そうか…黒子も大変だったんだな」

「何かあったら相談に乗るから気兼ねなく話して欲しいっス」

「黒ちんがずっとその調子だとむかつくしー」



優しい言葉に心臓をぎゅっとわし掴まれた気分になった。
2週間後が少し怖い。












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