03
それからは、近隣校との練習試合のため毎日バスケの練習で忙しい日々を送り過ごした。
たまに図書室へ行くと苗字君が気付いてくれて小説の話をしたり雑談をした。
だからボクはすっかり父親の発言を忘れていたのだ。
「ショーゴから聞いたんだけど、今週末バスケ部は練習試合なんだろ?休む暇なく忙しいなあ」
「ショーゴ?」
「あれ?バスケ部って聞いたんだけど…。バスケ部に灰崎祥吾ってやついない?」
「ああ。灰崎君と知り合いだったんですか」
「そうそう。ショーゴがバスケ部辞めてから最近よく遊んでる」
「そうなんですか」
苗字君が灰崎君と仲が良いことに少しだけビックリした。
しかしすぐに苗字君はよく不良とつるんでいるので当たり前のことかと納得した。
「ねえ、黒子くん」
「なんですか」
「今度、黒子くんのオススメの小説貸して欲しいな。自分好みのミステリばっか読むのも楽しいんだけど、冒険してみたい時ってあるじゃん?」
そう楽しそうに苗字君が話すからボクまで笑顔になった。
「別にミステリじゃなくても良いからさー。黒子くんのオススメが読みたい」
「良いですよ」
「え!マジで!!?」
「なんですか、その反応。傷つきました」
「え…いや、ゴメン。黒子くんがOK出すと思わなくてさー」
ボクがむっとした表情をすると苗字君は眉を下げてボクの反応を伺う。
あまり見たことない表情にドキっときたのは内緒です。
「それじゃ、気が向いた時に持ってきます」
「ありがとう!楽しみにしてる!」
「苗字君もオススメの小説貸して下さいね」
「いいよいいよー!黒子くんが好きそうなの探しとく!!」
こうやってまた苗字君と会う約束が出来たのだからボクは大満足である。
部活でどんなにヘトヘトになっても頑張れる。