16

心臓がバクバクして寝れず、気付けばアラームが鳴っていた。
苗字君がもぞもぞと動くたびに布団がずれる。
アラームを止め、苗字君の身体を揺すってみる。

「おはようございます、苗字君」

「…んっ。んー?黒子くん…」

「おはようございます」

「おはよう…」

寝ぼけた苗字君を見れるなんて凄く貴重だ!
しっかり目に焼き付けておこうと思った。
横であくびをして伸びをしている苗字君がいて、何だか修学旅行の気分である。


「黒子くん、今から着替えるー?」

「あ、はい」

「それじゃ、またあとで。布団ありがとう。よく寝れた!」

そう言い残し、苗字君は自分の部屋へと帰って行った。
僕は全然寝れなかった、とは言えなかった。



リビングへ行くと、テーブルには雪子さんの手料理が並んでいた。
今までずっと男2人だったせいでこんなに豪華な食事は久し振りだった。
お弁当まで用意されていて胸がいっぱいになった。
あんなに再婚したくないと思っていた気持ちが嘘のようだ。
少しして苗字君が降りて来て、一緒に朝食をとった。
すごく美味しかった。お弁当も楽しみである。


朝練の時間には余裕で間に合うだろう、と考えながら靴を履いていると苗字君が来た。

「黒子くん、一緒に学校へ行こう」

「え?苗字君はまだ早くないですか?」

「この家から学校への行き方が分からないから黒子くんに連れていってもらおうと思って…」

申し訳なさそうに苗字君が笑った。
そして一緒に家を出た。
いつも一人で歩いていた通学路をまさか誰かと歩くことになるなんて思ってもいなかったことだ。
少しドキドキしながら苗字君と学校へ向う。
苗字君は横できょろきょろしながら歩いていた。


「おい、テツ!」

「おはようございます」

途中で青峰君に会い、3人で一緒へ向うことになった。
青峰君はジロジロと苗字君を見ながら歩いている。

「本当に、一緒に住んでんだな…」

ぼそっと青峰君が言った。
その言葉に少し照れて下を向いた。

青峰君といつものようにバスケのことをちらほら話しながら歩いていると、学校へ着いた。


「じゃあ、黒子くん朝練頑張ってね!」

「…はい!」

苗字君が手を振って校舎の方へ入ろうとしているところを青峰君が腕を掴んで引きとめた。

「おい…無視とは良い度胸じゃねーか」

「いつから居たんだ…?」

「はぁ?」

「まあ、冗談はさておき、朝練遅れるぞ。腕離してくんない?」

「テツに何かしたら許さないからな」

「番犬は大変ですね」

「あ?オレは犬じゃねーよ」

「何でもいいから腕離せよ」

青峰君が小さく舌打ちをして乱暴に腕を離した。

「行こうぜ、テツ」


苗字君は本当にボクと緑間君以外とは仲良くする気がないようだ。












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