01

母親に捨てられたあの日から父親とあまり話をしていないと思う。
家族と言うものはよく分からない。
家に居ても父親に気付かれないよう過ごして何年経っただろうか。
母親に捨てられた父親は見ていられないほど荒れていた。
中学でバスケに出会い、彼らに出会い、少しでも家のことを考えないようのめり込んだ。
ボク1人では経験できないようなキラキラした世界。
そして、ボクの世界は変わった。



最近、バスケ部で苗字名前と言う人物が話題になっている。
どうやら先日の模試で緑間くんよりも成績が良かったらしい。
ボクが苗字名前を最初に見たのは昼休みを図書室で過ごしていた時だった。
図書室の受付に座り本をゆっくりとめくる苗字名前はとても絵になっていて、声をかけるのをためらった。
ボクから声をかけることはなく、苗字名前がボクに気付き事務的に本の貸し借りの手続きをしたと思う。
流れるような動作だったので、ボク自身が陰が薄いことを忘れていた。苗字名前は何のためらいもなくボクに気付いていたのだ。

後から苗字名前は図書委員長だと知った。

彼の周りにはいわゆる不良と言う人達が集まってにぎやかにしている。ボクとは疎遠な世界だ。


「何で苗字の周りは不良だらけなんスかねー。苗字自身は不良と言うよりも模範的な生徒っぽいのに」

「外面はあんなんだけど実はアイツも不良なんじゃねーの」


そうなのだ。苗字名前の見た目は制服をきっちりと着こなした模範的な生徒なのだ。
成績も入学してから5本指に入る位置から落ちたことはないそうだ。
いつもつるんでいる不良達とは無縁な世界で生きていそうなのに、何故か苗字名前は彼らと一緒にいる。




そんなキラキラした世界が続いていたある日、父親が上機嫌で帰ってきたところに出くわした。

「ただいま、テツヤ。」

「おかえりなさい」

「あ…その…。テツヤに会ってもらいたい人がいるんだ」

「は?」

恥ずかしそうに俯く父親に、頭の中で警鐘が鳴り響いた。













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