14

赤司君の機嫌は悪い日が続いた。期末が終わるまでずっとこの調子なんじゃないかと思う。最悪だ。
部活もピリピリした空気が漂っている。


ボクと緑間君は苗字君のことで話すようになった。
お互いにあまり話したことがなかったのでこういうきっかけで会話が続くなんて新鮮である。
苗字君のピアノはとても綺麗な音色を奏でていたそうで聞きたいと思った。
緑間君の通っていたピアノ教室で、苗字君は緑間君以外の友人を作ることなく2人きりでいたそうで。
緑間君いわく、苗字君は性格が捻じれているから友達を作っても長続きしないそうだ。
ボクと図書館で会話しているのを偶然見かけたらしく、苗字君があんなに懐いてる姿は緑間君以外に見かけたことがなかったらしい。嬉しかった。

気付けば、苗字君と雪子さんが引っ越してくる日が近づいていた。
先日から父親と部屋の掃除をしている。
元々大きな家で部屋の数は余っていたのだからほとんどすることはなかったのだが。

この部屋に苗字君が住むんだと考えると少しドキドキした。
苗字君の部屋はボクの部屋の隣になる予定だ。



「名前はいつ黒子の家に引っ越すんだ?」

「今週末。今ダンボール詰めしてるんだけど、なかなか片付かなくてさー」

「手伝おうか?」

「大丈夫。それにしんたろーはバスケの練習頑張ってよ」

「そうか」

「引っ越したら呼んであげるから」

「べ、別にいいのだよ!」

「照れなくても良いってー!黒子くんも来て欲しいよな?」

「…そうですね。苗字君が呼んだなら歓迎しますよ」

「黒子くんもそう言ってるし、1番に呼ぶよ!楽しみだなあ」


あの日からボクと苗字君と緑間君でお昼を食べるようになった。
緑間君と苗字君の仲の良さを思う存分見せつけられて、あまり良い気分ではない。
緑間君に恨みがましい視線を向ける。


「そう言えば、黒子と再婚するのならお互い苗字呼びはおかしくないか?」


緑間君がぽつりと言った。


「あー…確かにそうだなあ」

「そうですね」

あまり呼び方のことを考えていなかったので、ボクと苗字君はきょとんとした顔をした。
苗字君以外の呼び方を呼ぶのは少し恥ずかしい。


「それじゃあ、名前呼びにする?テツヤ?」

「はい。何ですか、名前?」


名前を呼び合ってぼっと顔をお互いに赤くした。
何をやっているのだよ、と緑間君が言った。

「何か照れるなあ…」

「はい…」

顔を赤くして俯く苗字君は可愛いと思う。
釣られてボクも俯く。

「もう少し慣れてから名前呼びにする。心臓が持たない…」

「はい…」

「馬鹿なのだよ」


緑間君が呆れて言ったと同時に予鈴が鳴った。












「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -