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食事会はどこかぎこちなく進んだ。
父親と雪子さんは仲良さそうに話しているし、たまに苗字君も会話に入っていて絵になっていた。
父親が一度席を立ち戻ってきた。ようやく心を決めるらしい。初めてみるような真剣な顔つきだった。
「雪子さん、名前くん。良かったら家族になってくれませんか?」
「…はい!よろしくお願いします」
雪子さんは幸せそうな顔で父親を見て微笑んでいるし、苗字君も笑っている。
ボクだけ取り残されたような感じがした。
「名前くんもそれで良いのかい?」
「はい。ずっと父親に憧れていたので黒子さんのような素敵な父親ができるなんて幸せです。それに、黒子くんと兄弟になれるし…」
苗字君がボクの方を見て、本当に本当に幸せそうに笑った。
「ボクも…ボクも!苗字君と兄弟に、なりたい、です!」
そのせいで身を乗り出して叫んでしまった。
みんな驚いた顔をしている。だんだんと恥ずかしくなってくる。
「あ…その…」
「黒子君、ありがとう」
苗字君はやっぱり幸せそうな顔で笑った。
こうして苗字君とボクは兄弟になったのである。
苗字君の笑顔に絆されたボクだが、色々な問題が山積みなことを思い出し、父親と雪子さんが幸せそうに話していた内容をほとんど聞いていなかった。
どうやら来週から雪子さんと苗字君はボクの家へ引っ越すそうだ。