09

図書室へ寄らなくなってあっと言う間に2週間が経った。
食事会当日、父親は昨日からうきうきとテンションが高い。
ボクの気持ちはあの日から沈んだままで今日が苦痛で仕方ない。
父親に急かされながら準備をした。もうどうにでもなれと言う気持ちでいっぱいだ。
父親とのテンションの差に自分でもびっくりするが顔には出さない。いつもの無表情で食事会をするレストランへ向った。
待ち合わせ場所に30分も早く着いた。父親は横でずっとそわそわとしている。
良い天気だと、バスケがしたいと思いながら空を見上げた。
自分はこんなところで何をしているんだろうと言う気分になる。


「お父さん、ボク、今日会う人の名前知らないんですけど…」


そう言えば聞いてなかったな、と思い父親に話しかけた。


「あれ?言ってなかったかな。彼女の名前は―――…」


ぼんやり父親の言葉を話半分に聞いていると、遠くに苗字君らしき人が見えた気がした。
ばっと勢いよく顔を上げると苗字君と目が合う。


「黒子さん!」


苗字君の少し後ろにいた綺麗な女性が名前を呼ぶ。


「苗字さん!すぐに分かって良かったです。迷いませんでしたか?」

「はい。大丈夫でした。待ち合わせの時間よりも少し早くに着いたのですが、黒子さんはもっと早かったんですね。お待たせしてすみません」

「いえ。私たちも今来たところですよ」


父親と女性が仲良さそうに会話するなか、ボクは苗字君から目が離せなかった。
苗字君も驚いた顔のままボクから視線を外さない。
私服姿の苗字君は少し大人っぽい。


「こちらが、息子のテツヤです」


急に父親に肩を掴まれ現実に戻された。


「はじめまして。黒子テツヤです」

「はじめまして。苗字雪子と言います。今日はよろしくね」


まるでテレビの中から出て来たくらいに美しい女性はそう言って笑った。
笑った顔が苗字君に似ていると思った。


「この子がうちの王子!名前よ」

「はじめまして。苗字名前です。今日はどうぞよろしくお願いします」


苗字くんの笑った顔を久し振りに見た気がした。



心臓が痛い。












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