08

結局あの時何があったのか赤司君の口から語られることはなかった。
もやもやした気持ちのまま朝を迎えた。
昼休みに図書室へ寄ってみるといつものように苗字君がいた。
しかし今日はいつもと少し雰囲気が違う気がする。図書室の空気も冷たい。
図書室へ入りカウンターまで近づいたが苗字君は気付いてくれない。
苗字君の目の前に立っても苗字君は本に没頭している。
いつもなら図書室の扉を開いたところで声をかけてくれるのに…。


「…苗字君」

「ああ。黒子くん、いたんだ…」


ボクの声に、苗字君は少し驚いた顔をしてこちらを見た。
これではクラスメートと同じではないか。


「ボクの事、気付きませんでした?」

「ゴメン。本に集中してた」


苗字君はそう言って笑った。
それでもこの胸のもやもやはとれない。


「昨日、赤司君と何があったんですか?」


ボクの声が図書室に響いた。空気がどんよりと重く冷たくなった気がする。


「楽しい話じゃないから秘密」

「はぐらかさないで下さい。君は平和主義って言ってたじゃないですか」

「そうだよ。僕は平和主義なんだ」

「苗字くん…」


「ゴメンね、黒子くん。僕、バスケ部のこと嫌いになったんだ…」



廊下を走って走って、屋上へ向う。
苗字君の言葉のせいで頭が痛い。心臓が痛い。
屋上のドアを開けると青峰君がいた。


「テツ…?どうしたそんな顔して。何かあったのか?」

「…青峰君」


青峰君の隣に座り、昼休みを過ごした。
青峰君は不思議な顔をしていたが何も言わずただ隣に座っていてくれた。

午後の授業も部活も全く身に入らずぼんやりと過ごした。
会ってたった数日しか経っていなかったのに意外にもボクの中で苗字君の存在が大きかったのだ。
苗字君にはもう会えないな、と思考の海に沈んだ。












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