06

それから少しだけみんなが優しくなった気がする。…気がするだけだが。

図書室へ行けば苗字君がいた。ボクに気付いてこちらを向いて笑った。
バスケの練習が続いていたせいで苗字君に会うのは久し振りだ。


「あ、すみません。オススメの小説持って来てないです」

「気が向いたらで良いって。楽しみが増えて期待が高まるから」

「プレッシャーじゃないですか」

「気にすんなって!久し振りに黒子くん見たけど、バスケ部の練習忙しい?」

「はい。みんな次の練習試合に向けて頑張ってますから」

「そっか!ショーゴなんてバスケ部辞めてから遊んでばっかでさあ。楽しいから良いけど」

「苗字君と灰崎君の組み合わせって凄く珍しい光景な気がします」


前から思っていたのだ。苗字君と不良と呼ばれる人達は釣り合わないと。
苗字君からはあの独特な殺伐とした感じが一切ないから。


「そんなことないと思うんだけどなあ。周りから怖がられてるけどみんな良い人だから」

「苗字君は喧嘩強いんですか?」

「ははっ。何それ!喧嘩とかしないから!僕平和主義だから!!」


お腹を抱えて笑いだした苗字君。何がつぼだったのだろうか。


その後は、最近出た話題書とミステリ小説のことで盛り上がった。
苗字君は江戸川乱歩の大ファンであることが分かった。
乱歩地獄をと言う映画を見て鏡地獄の撮影方法が気になったとか何とか。原作をかなり改変してることは良いのだろうか。



放課後は練習ですっかり体力を奪われ、家に帰るとすぐ寝た気がする。












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