最初に手を差し伸べてくれたのは、君の方だったね



彼女、奈津と玲は、どこが違うのだろう。
隣で穏やかな寝息を立てて眠る玲に腕枕をしてやりながら、そんなことをふと考える。僕は面食いではないけれど、容姿に関しては、二人とも同じくらい整っていると思う。スタイルの面でいえば、玲の方が凹凸があるとは思うけれど、もっと色気のある女と一夜を共にしたことなど幾度もある。その辺りから考えると、まだ高校生である玲や、ましてや奈津相手に色気の面で優劣はあまりないのではないだろうか。


性格に関していうなら、多分奈津の方が、玲よりずっといい。
玲は気が強く強かで計算的でおまけに狡賢くあざとい。さすがに歳上慣れはあまりしていないのか、それを踏まえて迫ってやればあたふたする辺り一応可愛気もあるのだが、如何せん男慣れしすぎている気がする。
それに比べて、奈津は純粋だ。玲と違って男慣れしていないのか、些細なことで赤面する。ついでに、ドの付く鈍感。可愛らしい容姿とその素直な性格からかなりモテていた彼女に惚れていた男は大勢いただろうが、果たして何人に気付いていただろうか。…全く気付いていない、ということも有り得るかもしれない。彼女は、そういう女だ。彼女の兄、沢田綱吉の守護者の連中もアルコバレーノの赤ん坊も、揃って彼女を好いていた。それが、どういうわけか僕を好きだと言い出したのには驚かされたが、まぁ好都合というところか。


沢田奈津は、全員の憧れの的で、高嶺の華だった。
皆彼女が好きで、大切で、愛していた。
それでも僕は、彼女を好きにはなれなかったんだ。






「おにーさん、おにーさん大丈夫!?」
咽返るほどの血の味と、肌に纏わり付く不愉快な湿気と、遠くから聞こえる君の声を、今でも鮮明に覚えている。
君は、僕が君を助けてくれた、と笑うけど、違うよ。
最初に手を差し伸べてくれたのは、君の方だった。
先に堕ちたのは僕の方だった。
僕が愛したのは、君だった。



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