午前三時、私は馬鹿みたいに祈るのです
皆が寝静まった午前三時、私は今日も鳴らない携帯を見つめて眠れない夜を過ごす。 どれくらい前からだろうか、恭弥さんに女の影がちらつき始めたのは。初めは、ただの勘違いだと思っていた。仕事柄、女の人と触れ合う機会だって少なからずあるわけだし、今までは、こんな違和感を感じたことなんてなかった。
最初は、香水の香り。 別に女物の香水を漂わせていたわけじゃない。だけど、恭弥さんが唐突につける香水を変えたのだ。今までの、鋭さを感じさせるだけのものから、ほんの少しだけど、甘さを漂わせるものに変わった。 女の人は、男の人が変わると香水を変えるって言う…それが、男にも適応されないと は、誰にもいえない。 そこから、今までは気にしていなかったことがどんどんと気になってきて…鳴らない携帯が、恭弥さんの答えのようで、どうしようもなく悲しくなる。
ツナにも、皆にも心配をかけないようにと出来るだけ明るく振舞っているけれど、そろそろ限界だ。 恭弥さん、恭弥さん、会いたい、よ。 今誰といるの?本当に、仕事?忙しいって、それは本当なの? 確かめに行きたい、でも、怖い。 もし、仕事じゃなかったら? もし、誰かと会ってる恭弥さんを見てしまったら? そんなの、耐えられない。 ああ、嫌だな。私、今、すっごく重い、嫌な女だ。 この間のクリスマス、恭弥さんに急用が入ったせいでデートできなかったことを、まだ気にしてるの? あれは、仕方ないことだったじゃない。本当に急用だったって、骸さんが証明してくれてるじゃない。
わかっているのに、それなのに。 消えない不安ばかりが胸に溜まって、私は今日も、馬鹿みたいに祈るのです。
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