だけど、やっぱり 愛されたかったよ




「…奈津、」


恭弥さんと久遠さんが去っていった後で、ツナ達がやってくる。
部屋の真ん中に座り込んだ私と、開け放された窓を見て、大体の事情は飲み込んだみたいだった。さっきの恭弥さんの告白を、ゆっくりと話す。私が、最初から愛されていなかったこと、それら全部、話した。


「…なんだよ、それ」


ポツリ、ツナが呟く。皆の心を代弁したかのように。
その瞳は驚愕と嫌悪に揺らめいていて、私の全く知らないツナがいた。
…ごめん、なさい。
気付かなくてごめんなさい、皆が私を想っていてくれたこと、今の今まで、気付かなくて、ごめんなさい。
久遠さんに言われるまで気付けなくて、ごめんなさい。
こんな私で、ごめんなさい。


「ずるいね、奈津さん。ずるいよ。あたし、あたしも、そんな風に愛されたかった。綺麗な世界で、綺麗なものだけ愛していたかった、あたしも、そんな風に生きてみたかった、よ。それなのに、ずるい、酷いよ…それが当たり前で、気付きもせずに、踏みにじるなんて、酷い、酷いね」


奈津さんは、酷いよ。
飛び降りる寸前にかけられた久遠さんの言葉が、頭から離れない。
当たり前なんかじゃ、なかった。愛されなかった人間だって、いるんだ。そんなことにも気付けずに、感謝も知らずに生きてきて、ごめんなさい。


ねぇ、ねぇ、恭弥さん。
もしも、私が不幸だったなら、貴方は私を愛してくれましたか。
感謝を忘れずに生きていたなら、貴方は私を選んでくれましたか?
わかってる、わかってるの。答えがノーであることくらい、わかってるの。
それでも、好きなの。
あんな酷いことを言われた後でも、まだ愛してるの。




だけど、やっぱり、愛されたかったよ。




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