僕はただ、君の隣で笑えたら、と

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愛や恋などくだらない。ずっとそう思っていた。
恋愛感情なんていうものは一時的なまやかしで、脳が引き起こした勘違い。もしくは、子孫を残すために発情したのを誤魔化すための適当な理由付け。独占欲の延長線。
だから、好きだ、なんて言われてもどうでもよかったし、理解できなかった。
ヤれたらいいんでしょ？所詮、人間も動物じゃない。大事なのは子孫の繁栄で、他に理由なんかない。


「雲雀さん…っ、ずっと、好きでした！」


くだらない。でも、君は使えるよね？
強くて弱い小動物、沢田綱吉の妹、沢田奈津。兄と同じで、時々凄く強くなるのを知ってるよ。
それに、君はあの五月蝿い群れ連中に異様に大切にされている。それこそ、掌中の珠のように。
沢田奈津をコントロールできたら、あの群れも意のままに操れるかもしれない。そう、考えた。
ボンゴレとかいう組織が、何とか僕を手懐けようと四苦八苦していることなんか知っている。中々上手くいかなくて、焦れてきていることも。
飼いならされたふりをしてやろう。彼らがそう思い込んでいる、六道骸のように。沢田奈津に手綱を握らせてやろう、すぐに引き千切ってしまえる、脆い手綱を。僕を飼えるものなら飼ってみろ。僕を支配したつもりで、その実支配されていることに、彼らはいつ気付くのだろうか。


彼女は知らない、僕らの関係が酷く歪であること。自分が、ただ利用されているだけだということを。何にも知らないで、笑い続けるんだ。
そんなところが、憐れで、無様で、いっそ愛しいほどだ。
僕は人を愛せない、僕は愛など知らない、信じない。
なのに、一瞬で玲を好きになった。やっとわかったよ、これが、本当の"愛しい"って気持ちだね。
初めて、他人の幸せを願った。
初めて、自分の幸せを願った。
ただ、君の隣にいられたら、と、小さな小さな幸福を願ったんだ。











置いていってごめんね。
だけど、確かに愛していたよ。
君が殺されそうになったんだ、僕といるところを見られて、それで。
…逃げて、ごめん。
君を失うくらいなら、なんて、高尚な言い訳をつけて、本当は、君を失う恐怖に耐えられなかっただけなんだ。


ごめんね、ありがとう。
赦してくれて、ありがとう。