結局そういうものなんだろ、って、俺は彼女を見てそう言った。今の今まで阿呆みたいに大口開けて笑ってた彼女は、一度も言ったことが無かったけれど、どうにも嫌いになれなくて、でもやっぱり、どうにも好きになれなかったその底無しにしあわせそうな笑顔を消して、俺のよく知る、この腐った世界の住人の眼で笑った。

「気付いてたの」

それは肯定だったし確認でもあったし、そうして諦めでもあった。この世界に長く身を置いて、色々なことを知って、経験して、理解したくせに。如何やら俺は、この目の前の女を、手にかけるのが怖いらしい。

殺さず捕まえて。だって後ろで糸引いてるファミリーを聞き出さないと。同情じゃない。私情じゃない。頭の中で並べ立てる言い訳と、右手に握った銃は、嫌になるほど釣り合わず、踏み出す脚を一瞬鈍らせる。嗚呼、解ってるさ。お互い本気で好きだった。


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