好き、だった、んだろうねえ。
ぐすぐすと鼻を鳴らして泣き腫らしたんだろう事実を雄弁に物語る真っ赤な瞳で、登校してきたツナを見詰めながら、雲雀は無感情にそう考えた。

昨日。
雲雀と彼、沢田綱吉は、別れた。

嗚呼、どうしてかな。
まだ好きだったはずなのに、どうして、別れてほっとしているんだろう。
もう、くだらない嫉妬に振り回されずに済むからだろうか。もう、彼が自分以外を優先させる様を近くで見なくていいからだろうか。もう、一方通行の愛に悩まなくていいからだろうか。それとも。

「―――――…くだらない」

は、と鼻で笑い捨て。踵返す瞳の先、色恋に踊らされた自分がやけに惨めに見えた。
嗚呼、今さらだ。本当にくだらない。
好きだった。嗚呼、それを認めないほど、なかったことにするほど、子供じゃない。好きだった、愛していたさ。
だけど所詮。その愛とやらは、自分に不都合なことが起これば。あっさり冷めてしまえる程度の問題だったのだろう。
愛は継続させるのが最大の問題だと誰が言ったのだろうか。自分も大概自己中心的で他人の機微など考えもしない人間ではあるが、それを解って自分と付き合っただろうツナに失望の念が無いわけでもないのだ。
自分勝手だろうか、この思いは。
そういう人間だと、厭というほど知っていたはずだろう。群れが嫌いだと。付き合う以上相手に合わせるのも当然だが、自分の群れ嫌いは、あまりにその中にいると蕁麻疹に悩まされるほどの生理的なものなのだ。
駄目なのだ、本能的に。自身の意図ではどうしようもない。
だから、多少は彼が譲歩してくれてもよかったのではないかと。他者とあまりに異なる価値観を有しながら、そう思うのは我儘だったのだろうか。


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