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彼女はうつくしく生きたがった。
けれどそれは自分達の生きる職場ではどうも無理なことであって、そうなのだと幾度かの前線で納得せざるを得なかった彼女はならばせめてうつくしく死にたいと見惚れるほど綺麗な表情でのたまった。

それが俺の中の彼女の、一番印象に残っている表情である。
けれどだからと言って俺は、彼女に恋愛感情を抱いているわけではなかった。うつくしいとは思う、それは容姿ではなく、その生き様が。
つまり何かと言うと、俺は彼女を人間として好いているのだ。

たとえば彼女に恋人を紹介されたと仮定しよう。
その"もしも"を自分で想像し、溢れてくる感情は嫉妬ではなく紛れも無い純粋な祝福の念であることからも、俺は彼女を好きではないと確信した。
だから俺は彼女を恋愛感情をもって見てはいないのだと、そう何度も常守に伝えているのだが、若いこの上司は恋は盲目の言葉通りに俺の言葉を全く以て信用していない。
それどころか、下手したら内密の恋人同士ではないかなんて疑っている。
その上、自分が彼女を好きなのだという自覚がないのだからまた厄介なものだ。

それだけではない。
常守の密かな、そして無自覚の想い人。そのナマエも、同様の勘違いと誤解をしている。
組むことの多い俺と常守監視官の仲を疑っているらしい。
だから、それも。同じことだ。
俺は、常守のその信念に、何か感じるものがあったから、一人の人間として好意を抱いているに過ぎないというのに。

嗚呼全く、本当に。
俺は何て嫌な立ち位置に立たされているのだろう。


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