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「ついたぞ、ロアナプラだ」



長い航海を終え、久方ぶりに地に足を付ける。嗅ぎ慣れない匂いが漂っている。ここが、ロアナプラ…悪党という悪党が集う、犯罪都市…。思っていたよりものどかな雰囲気に、何だか拍子抜けしてしまう。もっとギスギスしているのかと思っていたが、この気候とあいあまって、ゆったりとしていた。


…ちなみに、俺が今言ったダッチさんの言葉を理解できるのは、彼が日本語を喋ったからでもましてや俺が突然賢くなったからでも何でもない。リボーンが試作品の特殊弾として持っていた弾に英語を理解できるようになる、というなんとも胡散臭いものがあって、せっかくだからと試してみたら成功したというだけだ。理解は出来る…のだが、もちろん副作用もあり、他の特殊弾を撃たれたらたちまち効能は解けてしまう。その上、二度目はだいぶ時間を置いてからでないと効かないらしい。乱戦が始まった場合は非常に不安だが、意思疎通の出来ない状況は非常に不便であったため、とても助かった。英語堪能な獄寺くんや雲雀さん(当たり前だがリボーンもだ)が羨ましい。


到着の時間は、だいたい夕暮れ前だった。船から下りて、雑多な街を歩く。少しすると、次第に陽も暮れかけてきた。夕闇の落ちるここは、何だか独特の雰囲気がある。どこに行くのだろうと口を開きかけたところで、聞き覚えのある声が聞こえた。



「…おや、雲龍?奇遇ですね、君がここに来るだなんて珍しい」
「え…?む、骸…!?」
「沢田綱吉…?君達が、どうしてここに…」
「そ、そういうお前こそ、何でこんなところに…!」

「久しぶり、レオ。しばらく見ないと思ってたら、こっちに来てたんだ」
「ええ、お久しぶりです。何やら不穏な気配を感じたもので…」
「相変わらず鼻がいいね…奴らが嗅ぎ付けてきたみたいだよ」
「…例の件ですか。相変わらず、恨まれてますね」
「だろうね。全く、糞みたいな世界だよ」
「全くです。…で?どうして彼らがいるんです?」
「…まぁ、色々あってね。襲撃されたのを見られて、着いてくるの一点張りだ。死んでもいいなら来いって言った」

「…えっと…、」
「ああ、お久しぶりです。ボンゴレ、アルコバレーノ、獄寺隼人。知っての通り、僕は六道骸ですが…こっちではレオーネです、骸では通じませんよ」


そこにいたのは、まさかの骸だった。何やら親しげに雲雀さんと話しているところからすると、きっと骸もこちらの関係者なのだろう…何だか頭が痛くなってきてしまった。獄寺くんもぽかんとしている。



「…そうだ、レオ」
「はい?」
「今から"エンジェルズ"に行くけど、君も来るかい?」
「ええ、ご一緒しますよ。詳しい話は、また後で」

「エンジェルズかよ…おい雲龍、あたしは興味ないから、イエローフラッグに行ってるぜ」
「あ、じゃあ僕も」
「それはいいが、暴れんなよ、レヴィ」
「なるべくなー」


そう言って、レヴィさんとベニーさんが歩いていってしまった。じゃあ行こう、と言って歩き出す面々を慌てて追いかけ、ちょうど傍にいたダッチさんに気になったことを尋ねる。


「…あ、あの、ダッチさん」
「ん?」
「雲雀さん…じゃなかった、雲龍さん?の言ってた、エンジェルズって…」
「ああ、あそこはまぁ…ストリップバー兼、売春宿だな」
「……へ?」


え、ええぇぇぇええええ!!?