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『やぁ、久しぶり。僕は雲龍…さっそくだけど、例の奴らが嗅ぎ付けてきたよ。…うん、そう。今からそっちに向かう…派手に乱交パーティといこうじゃないか』


学校の応接室…ではなく、厳重なセキュリティの完備されたマンションの一室へと案内される。入った途端電話をかけてぺらぺらと流暢な英語が出てきたことにもちろん驚いた。短い会話が終わると、ソファーに座って俺達に向き直り、話し始める。…ちなみに、後でリボーンからあの英語がなんて言っていたのか聞いて驚愕した。乱交パーティって…雲雀さんの口から乱交パーティって…!!



「…さて。赤ん坊なら今の会話でわかっただろうけど、僕はこの件に一枚噛んでる」
「……俺はそれよりも、テメーの口から品の欠片もねえ言葉が出てきたことの方が驚きだぞ」
「肥溜め暮らしが長かったからね、下品なスラングばかりの中で生活してたんだ……で、本題だけど。単刀直入に言おう。僕は蔡雲龍(ツァイ ユンロン)というもう一つの名前で、一時ロアナプラで暮らしてた」
「何…ロアナプラだと?」
「そう。知っての通り、あそこはギャングの集まるほとんど無法地帯な街だ。法外な仕事で生計を立ててたんだけど、ある時やっかいな組織に目を付けられてね」



雲雀さんの話を纏めると、かつて蔡雲龍という名でそのロアナプラという土地で暮らしていた時、面倒な組織と関わってしまったらしい。それが原因でそこから出て、放浪暮らしになったのだとか。これ以上詳しい話は出来ない。今からそこへ戻って片をつけてくると言った雲雀さんに、リボーンが待ったをかけた。



「待て、雲雀。そういうことなら、俺達も行こう」
「……は?ふざけてるの?」
「守護者の危機は、ファミリーの危機だぞ」
「寝言は寝てから言いな、赤ん坊。余計な詮索で穴を一つ増やされたら堪らないだろう?」
「…ツナ、お前はどうしたい」



突然、俺に振られる話。
正直言って、怖い。でも、怖いけれど…雲雀さんを一人でそんなところに行かせるだなんて、嫌だと思った。


「俺も…行きます!雲雀さん一人を行かせるわけにはいきません!」
「…舐めた口きかないでくれる?一般人が足を踏み入れて、無事で済む世界じゃないんだよ」
「それなら、雲雀さんだって!」
「僕は君達とは違う、あちら側の人間だ…迷いは命取りになる。人も殺せない甘ったれに来られたら迷惑なんだよ」
「でも、それでも…!」



「雲雀、こいつらのことは俺が責任を取る。行かせてやってくれ」
「……邪魔をしたら殺すよ。脳味噌ぶちまけたい奴だけ付いてくればいい」
「ああ、それで構わねえ」





俺の知らない雲雀さんの姿。
俺の知らない世界の話。
俺の知らない命の有様。

全部全部、俺は知らないままでいた。