最近、学校で謎の現象ばかりが起こっている。
いきなりの銃声や爆発、果ては怪しい黒服の男まで。
並と町名につくほど普通だったこの街は、一体どうしたのだろうか。…いや、恭弥が仕切っている時点で、最早並とは程遠いということは百も承知なのだけど。
とにかく、この状況は何かがおかしいと思う。
どうして皆気にしていないのか…その図太い根性は賞賛に値する。
などと、ここ最近の悩みの種に頭を抱えながら、角を曲がったのがいけなかった。


「うわっ!」
「きゃ…っ」


どーん!と派手な音を立てて、向こうから走ってきた男の子とぶつかる。
その衝撃で、二人とも盛大にすっ転んでしまったのだ。
思い切り打ち付けたお尻が痛い…。
若干涙目になってしまったまま、立ち上がろうとすると、ぶつかった男の子が慌てて私に手を差し出してくれた。


「す、すみません…!俺、ちゃんと前見てなくて!」
「ありがと…大丈夫だよ」


なるほど、そそっかしいみたいだが大変礼儀正しいようだ。
きちんと手を差し出すという心遣いまで見せてくれるとは、いやはや感心である。
そんなことくだらないことを考えながら、彼の手をとり立ち上がる。
ススキ色の髪と目をした、かっこいい…というよりは愛らしい男の子だった。
いや、男の子に可愛いは失礼なのだろうが、ビクビクと縮こまって震える様子は恭弥が時々愛でている小動物に通じるものがある。
いきなり動物愛護に目覚めた気分だ。


「本当にすみませんでした!えっと…先輩、ですよね?」
「え?ああ、うん。名字名前だよ、よろしくね」
「あ、は、はい!あの、俺は沢田綱吉って言います」
「沢田君ね、うん、よろしく」




どうやら、可愛らしい後輩が出来たようです。

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