「名字名前、応接室」


それだけ言って、さっさと切られてしまった校内放送。
青ざめるクラスメイトや先生には悪いけど、私はこの瞬間が一番好き。
(だって、行っても咬み殺されないのは私だけ)
そんな醜い独占欲、誰にも知られたくない。
ましてや恭弥には、絶対に。
緩む口元を必死に抑え、先生に許可を得て応接室へと向かった。


「遅いよ、」
「ごめんって、でも授業中だったんだよ?」


開口一番、理不尽な不満。
だけどそれも慣れたもの。
と、いうより、子供っぽくて笑ってしまう。


「…何笑ってるのさ」
「ううん、別に。それより、どうしたの」
「……ん、」
「?…何、これ」
「開けてみな」


テーブルに置いてある小さな箱。
それを目線で伝えてくる恭弥。どうやら、私にくれるらしい。
座り心地のいいソファーの真ん中に陣取って、その箱を開けてみた。


「…ケーキ?」
「貰ったんだけどね。でも、僕は甘いもの嫌いだから、あげる」


そのためだけに、授業中に呼んだのか。
相変わらずの傍若無人だ。
でも、それが私の幼馴染であり、私の好きな恭弥なのだ。
彼が、他の誰でもなく私を呼んでくれたのは、きっと幼馴染だから、という理由でしかないのだろうけれども、それでも嬉しい。


「ありがと、さっそく貰うね」
「うん」


給湯室からお皿とフォークを取り出して、ついでに私のと恭弥の分、二人分の紅茶を入れて、彼から貰ったケーキを口に入れた。
うん、美味しい。
どこぞの有名店から献上されたものであろうそれは、私が普段食べているものより、当たり前だが数倍美味しかった。



「美味しい?」
「うん、美味しい」
「へぇ…じゃあ、一口ちょうだい」
「ん、」


あんまりにも美味しそうに食べていたせいか、恭弥が一口ねだった。
フォークに一口分乗せて、彼の口元に運ぶ。
間接キスなんて気にしない。同じペットボトルで飲むなど日常だからだ。
今日も平和に、一日が過ぎていく。

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