名前が屋上に連れて行かれた。
そんな話を草壁から聞いた途端、僕は走り出していた。


名字名前。
僕の幼馴染の女の子。
親同士が仲がよかったらしくて、物心ついたときから一緒にいた子。
群れは嫌いだけど、名前とだけは長年一緒にいたせいか、むしろ傍にいないと落ち着かない。
そして…僕の好きな子。
いつからなんて思い出せない。ただ、はっきりとわかるのは、自覚したのは小学六年生の時。
僕に恨みを持つ中学生が、名前を人質にとった時だ。
許さない、って、自分でも怖いほど怒りが抑えられなくて、殺す寸前まで咬み殺してしまった。
怯えて怖がって泣いていた名前だけど、僕が助けにいくと泣きじゃくりながら抱きついてきた。
…僕だって、血まみれだったのに。
僕が何をしたか、ちゃんと見てたはずなのに、名前は僕に怯えたりせず、助けにきてくれてありがとう、ってふにゃりと笑った。
それが、とても可愛くて。
ああ、守らなきゃって思って。好きだって思って。
そうして僕は、初恋に気付いた。


守らなきゃ、僕が守らなきゃ。
僕のせいで何度も怖い目に遭っているのに、変わらずに笑っていてくれる名前を守らなきゃ。
それが、名前を突き放せない僕の、精一杯の償い。
ごめんね、離れたらいいのはわかってる。でも、離れられないから、ちゃんと守るから、傍に、いて。
まだ、幼馴染でいいよ。
まだこれ以上は望まないから。傍にいてくれれば、それでいいから。
そうやって、自分の心に嘘をつく臆病な自分は見ない振り。



「…ねぇ、何してるの?」



(怖いんだ、君を失うのが)

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