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初めて貴方を見たとき、俺は貴方を神様だと思いました。
貴方は知らないでしょう。
俺が、実はずっと前から貴方を知っていたことを。

それは、俺が所謂逆行といった現象に遭った前の世界での話です。
以前、俺と貴方が初めて会ったのは、応接室でしたね。いえ、応接室だと思い込んでいました。
でも、あの女に嵌められて、全てに絶望して、諦めていた、そんな時。
貴方に再会して、貴方が俺の全てを背負って、俺に存在意義をくれると言ったその時、俺の中に埋もれていた記憶が甦りました。
あの時出逢った神様は、貴方だったんですね。



あれは、俺が中学校に上がる前のこと。
一人で歩いていた俺はたまたま見たこともない細い横道を見つけて、好奇心からそこに入っていきました。
でも、ダメツナな俺のことです、案の定道に迷いました。
山の中に入り込んでしまって、日も暮れてきて、暗くて、怖くて。
泣いてしまいそうだったその時、俺はある神社にたどり着きました。
そこは、並盛神社の本堂なのだと後で聞いた場所です。
その日の夜は、怖いくらいに綺麗な満月で、散りかけの桜が朱塗りの鳥居に映えて
とても幻想的で。
それだけでも十分すぎるほどに綺麗なのに、その境内の中では、美しい舞装束に身を包んだ男の子が、一人舞を踊っていました。
漆黒という表現が似合うほど深い黒の髪は、それでも夜の闇に同化することはなく、艶やかに煌めいていて、それに相対するような白すぎるほどに白い肌は月明かりを浴びてキラキラと輝いていて、それらに囲まれた顔(かんばせ)は、今まで俺が見てきたどんな人よりも整っていて、それらが降り注ぐ桜の中で優雅に舞っていて。それはもう、この世のものとは思えない光景だったのです。
俺は、神隠しにでも遭ってしまったのだと思い込んでしまいました。

…気付いた時は、朝でした。
俺はどうやら、貴方の舞を見ているうちに気を失ったか眠ってしまったみたいです。
あまりの神々しさに、俺は夢を見たのだと思い込んで、そうして記憶に蓋をしました。
神様の舞の練習を覗くなんて、とても罰当たりなことだから。





ねぇ、雲雀さん。
あの時から、貴方は俺の、唯一絶対の神様。

いるかいないかすらもわからない神様より、どれだけ苦しくても助けてなんかくれない神様より、俺は貴方を信仰します
貴方の言うことは、それ自体が強制力を伴った俺への命令
貴方は、どんな神様よりも神々しい

俺の神様、全ては貴方の思うがままに

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