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そもそも沢田綱吉にとって、雲雀恭弥という存在は絶対だ。
それはもう、比喩でも何でもなく、彼の存在そのものが、綱吉を一人の人格者たらしめていると断言しても過言ではないだろう。
雲雀の言葉が絶対で、それが綱吉にとっての真実である。たとえ雲雀が誤った選択をしようとも、綱吉は、どこまでも雲雀を肯定し続ける。

彼がどうしてそこまで雲雀に心酔するのかは誰も知らないし、雲雀本人でさえそれを認知してはいない。
それでも、雲雀は綱吉を傍に置いていたし、それが当然のように日常が流れていった。

綱吉は雲雀に従い、彼のみを絶対の主とした。彼の命令一つで、眉一つ動かさずに手を下す。物騒ではあるが、均衡はとれ、それなりに平和だったといえる日常の最中、ある人物が並盛に訪れることとなる。
それは、彼らの運命を確かに変えていった。


「俺はリボーン、お前の家庭教師だ」
「はぁ?」


それはまた、奇跡の再会のようで。
一方で、悪夢の再会だったといえる。



「お前を立派なマフィアのボスにするために来たんだぞ」
「いや、マフィアとか興味ないから。というか、雲雀さんが望まないものは俺もいらないし」



取り付く島がないとは、まさにこのことだった。前世…と呼んでいいのかはわからないが、とにもかくも、以前の人生で散々な目に合わされたこの黒衣の赤ん坊のことを、警戒する理由があっても、歓迎する理由はどこにもない。
とはいえ、現在の綱吉の思考の主軸には雲雀の意思がある。
もし、彼がこのボンゴレという巨大マフィアを望むというなら、綱吉は喜んでボスの座を継承するつもりだった。そして、彼に組織を献上する。雲雀が望むなら、何だって叶える。狂った思考だといわれても仕方が無い。それでもそれが本心だった。

だが、雲雀はそれを望まなかった。以前それとなくマフィアや裏社会のことを尋ねてみたのだが、彼はこれといってそれらに興味がありそうな様子ではなく、そもそも表で地位を確立しつつあるのだから、わざわざそちらに手を伸ばす理由がないと返ってきた。
それに、彼はもう裏社会にも関わっている。そこに力も得ていた。
今さら、マフィアが何を言っても動くはずがない。
その時点を持って、沢田綱吉の意思も決定されていた。


「俺は、お前らの言いなりにはならないから」


恨むのなら己を。
憎むのならあの女を。

沢田綱吉は、牙を向いた。

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