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俺の目の前で、雲雀さんは死んでしまった。
いつかはこうなってしまうんじゃないかって、俺はずっと怖かったんです。
だから、俺は最後まで雲雀さんを裏社会に引き込むことを、俺の守護者だなんてものにしてしまうことを反対していた。
駄目だ、駄目だって、今思えば、超直感とやらが忠告していたんだと思う。
何度もリボーンに言った。だけど、リボーンは全く取り合ってくれなくて、ヒバリは必ず役に立つ男だって…無理矢理守護者にしてしまった。
その時俺は、猛烈にリボーンに対して怒りを覚えた記憶がある。
どうして雲雀さんに枷をつけるんだよ!あの美しい、自由の似合うあの人に、なんてことしてくれたんだ!、って。
守護者とやらになったって、雲雀さんがボンゴレのために動いてくれたことは一度としてなかったけど(取引による共闘なんかは別だ)、俺はどうしても、あの人の指に輝くボンゴレ指輪が不釣合いに思えてならなかった。
どんな会議の時でも、いつも一つだけ空いた幹部の椅子(骸も来ないが、代わりにクロームが座ってくれていた)。
お願いだから、どうか。
貴方はこの椅子に座らないで。
貴方を束縛することは絶対にないと約束します、叶うことならボンゴレからも離れて。
その美しい生き様を見つめ続けることを許してください。
雲だなんて貴方を呼ばせない。
雲だなんて、そんな、ちっぽけなものに例えないで。

そんな俺の想いは、誰も理解してはくれない。
守護者のくせになにやってんだ!と獄寺君は憤るし、たまにはこっちに来ればいいのにと山本は笑い、単独行動など極限に許せんとお兄さんは怒鳴って、怖いから嫌だとランボは泣き叫び、何年経っても自覚は生まれないかとリボーンが嘆いて、ったく恭弥の奴…とディーノさんが苦笑する。クロームは沈黙を続けていた。
皆、何を言ってるんだ。何を当たり前のことを。
そんな人だから、それだから雲雀さんを選んだんじゃなかったのかよ。
皆が望むような行動をするなら、そんなの雲雀さんじゃない。
守護者の自覚を持って俺に忠誠を誓って尽くしてファミリーを守る幹部?
どこが浮雲なんだ。そんな、ファミリーに囚われた存在が。
こんなことは言いたくないけれども、確かに雲雀さんは雲の守護者に一番相応しいんだろう。
だけど、それは一部分だけ。その一部分が、圧倒的に相応しすぎるのだ。
「何者にも囚われず我が道をいき、独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮雲」
雲雀さんは、何者にも囚われない。常に、我が道しかいかない。
ねぇ?何者にも囚われないのに、どうしてファミリーを守護しなきゃいけないの?
囚われているじゃないか。ファミリーという鎖に。その言葉の前後は、矛盾している。
雲の守護者なんてのは、あってなきが如しの椅子なのだ。

貴方が世界中のマフィアを潰し始めた時だって、俺は嬉しくて堪らなかった。
何度も、壊滅させられたファミリーの保護という形で、あの麗人の戦いを見つめていた。
ああ、なんて、美しい!
迷いの一切を捨て去った強烈すぎる一閃一閃。
敵わない。きっと、世界中の誰も、あの人には敵わない。
だって、あんなにも美しいのだ。
返り血を全身に浴び、破滅の香りを纏った雲雀さんの妖艶な姿に、笑みに、戦慄した。
美しい美しい美しい!
なんて美しいんだろうか、雲雀恭弥という存在は!

最後に残ったボンゴレに最終戦争を仕掛けてきた雲雀さん。
一応ボスだから、俺は反逆者(そんな相応しくない呼び名、使いたくないのに!)の雲雀さんの前に立ちふさがらなければならない。
貴方の行く手を遮ってしまった罪悪感は果てしないけれど、同時に、戦闘に飢えた貴方の瞳に俺が映されたことが嬉しくて堪らない。
だけど、だけど。



「僕より強い人間のいない世界に、もう未練はない」
「っ…雲雀さん!!」



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