BL | ナノ


「いい加減にしなさい雲雀恭弥、なんで僕達は君の旅行に付き合わされなきゃいけないんですか!」
「暇だから」
「僕らは犬猿の仲って奴でしょう!?というか、なんですかその理由!」
「あー…じゃあ、ボディーガード?」
「君強いでしょう!」
「チッ…じゃあ親睦を深めるためってことで」
「キャラ崩壊しすぎでしょう!」


パイナップルこと六道骸は、非常に困惑していた。
溺愛するクロームの部屋に不貞の輩が侵入したりしないよう頑丈な鍵を買おうと思い、黒曜よりも広い並盛の店に来たのが運の尽きだったとしか思えない。
そこに偶然居合わせた雲雀恭弥が手間が省けたと言わんばかりに彼を拘束し…もちろん実力は互角なのでそう簡単にはいかないが、雲雀の鍵代なら僕が出してあげるよという甘言に惑わされたのが悪かった。その上、麦チョコにつられたクロームが彼の家の車に乗っているのを見つけてしまったのも悪かった。近所の家の柿を勝手に食べようとしている犬とスーパーのチラシを見比べている千種を見かけてしまったのも悪かった。
結果、神が雲雀を大々的に支援したといわんばかりの状況が揃い、まんまと骸は捕まってしまった。
そして、雲雀と共に飛行機に放り込まれ…気が付いたら常夏の島でバカンスである。
一体何事だと問うても罪はないだろう。
嬉々としてはしゃいでいる犬と、無表情だがココナッツジュースが大変気に入った様子の千種と、せっせと砂の城を作っているクロームの三人はリゾートを満喫しているようだった。
どんな仕打ちだと嘆きたい。この状況に疑問を抱いているのは自分だけなのだろうか。
あまりに溜息を付いていたからか、ついに雲雀が飲んでいたグラスを傍に置き、寝転んでいたビーチパラソルから身体を起こした。


「あのね、ちょっとブチ切れたんだ」
「はい…?」

「前々からイライラしてたんだよね、あのボンゴレ、自分達がイタリア最強だからって圧力かければ何でも通ると思いやがってるんだよ。最初はまだ何とかなったさ、でも、あの指輪争奪戦?みたいなの、あれ、何?君達が起こしてくれやがった騒ぎは取り壊し予定の箇所だったからいいけど、あの戦い、なんでうちの学校でやるかな?しかも大半を損傷?勝負のために学校を変形?幻術師がカモフラージュしてたとか言うけど、あれ、本当にただカモフラージュしてただけだから。壊れた箇所は完全放置。それの後始末やら誤魔化しやら、誰がしたと思ってるのさ。怪我人続出で大騒ぎだ。ええ?そうだよ、僕だよ、勝手に騒いで勝手に乗り込んできて勝手に起こしやがった騒動の後始末は全部僕だ、いい加減にしろよ。治療費も全部こっち持ちなんだよもちろん後で請求したけどね、倍額で。慰謝料だよ感謝料だよ、それくらい貰ってもいいはずだ、文句あるならその粗末な×××踏み潰すよ。その後は何、よくわからない過去の亡霊が出てくるし、学校で重傷者は出すし。知ってるかい?死傷者の出た学校なんてのは経済的にも社会的にも大ダメージを負うんだよ復讐だかなんだか知らないがそんな過去の清算は余所でしろ、無関係の人間を巻き込むな。挙句の果てには勝手な呪い騒動もここで起こすときた。おまけに一般家庭や公共施設の破壊、それの支払いとか当人がするのが普通だよねそれなのに支払いを渋るんだよだから言ってやったさ、じゃあ損害賠償も慰謝料も払いませんってそのお宅一件一件回って言ってこいよそして払わない事情を説明して来い、ってね。そしたら行ったさ、ああ?なんなの、君達ふざけてるの僕相手なら脅しで何とかなるって?なあなあで誤魔化せるって?今まで起こしやがった騒動の後始末を全部してやった僕に対していい度胸じゃないか、だからさ、自業自得だと思うんだよね。こんな方法好むわけじゃないけどあっちがその気なら僕もその気になってやるよ、汚い方法で来られたならこっちも倍返しだ精々苦しむがいいさ、運よく騒動を片付けられたところでその後始末をする人間はいないんだからね、僕がいたならそりゃあ騒動の隠蔽も簡単だろう、でも僕は今ここにいるからね騒動が終結するまで帰ってなんかやらないつもりだ、僕の必要性というか苦労を身に染みて感じるがいいさ、自分の尻拭いは自分でするっていう赤ん坊でもわかることを学習し直すいい機会になるんじゃない?ああ、まぁつまり何が言いたいかっていうとね…

――――いい加減にしろこの×××野郎共が」






にっこりと素晴らしい笑顔で言い切った雲雀に冷や汗が流れた気がした。
しかも、若干NGワードが入っていた気がしなくもない。
彼らしからぬ暴言混じりのその鬱憤には壮大なる苦労が詰め込まれており、なんと言うか…賠償金、素直に払って謝ってよかった。心底そう思った。

そうすると何か、大人しく賠償金を払わなかったボンゴレ側は今頃…。




「その騒動のツケが回ってきているだけさ、君達を連れてきたのはあっちが隠蔽の際、楽をしようなんてふざけた考えを起こさないためにだよ」

払ってよかった、謝ってよかった。
骸はもう一度、心の底から自分の財源に感謝した。







ジョーカーの裏切り
(切り札は使いすぎてはいけません)


prev / next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -