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俺は、ようやく手に入れたチケットを眺めてひたすらに感慨に浸っていた。
やった、ようやくだ。
ついに念願の、「ヒバリ」さんのコンサートのチケットを手に入れたんだ!
しかもセンターのアリーナ席だ。
これに感動しないでどうしろと!!?


「ほんっとにツナって、ヒバリが好きなー」
「だってだって、あの美しすぎる容貌とあの美しすぎる声と圧倒的な歌唱力!まさにステージの女王にふさわしい人だよね!!」


隣にいた山本に呆れたような表情でそう言われ、とっさにそう言い返す。
とにかく、ヒバリさんは美しい人なんだ。
絹のような滑らかな黒髪は腰まであって、歌うたびにそれがさらさらと揺れている。
歌っていて時折漏れる掠れた声は、同姓であってもたまらない。
…あ、俺、一人称や制服やらは完全に男のものだけど、れっきとした「女」です。
家のしきたりかなんかで男のふりをしてるからこんなんだし、友達も男ばっかりだけど、それなりに楽しく生きている。
その楽しさは、主にヒバリさんに向かってるけどね!!


「まぁ、否定はしないのなー。ヒバリってマジですげー美人だし、歌とかちょー上手いしさ」
「だよねーっ!」
「「さすが、女王様」」


女王様、ってのは、ファンの間でのヒバリさんの通称。
あの美しさと、歌手の頂点に君臨する様と、彼女の性格から、いつしかそう呼ばれるようになっていた。
ヒバリさんは、凄く女王様気質の人なんだ。
前、インタビューで「ナンパとかされたことあります?」って聞かれて、「あるけど、そんな身の程知らずには鉄拳をお見舞いしてあげたよ。私に声をかけるなんて、図々しいにも程があるよね」って答えたことが始まり。
普通、そんな自意識過剰なこと言ったら非難されそうなものだけど、相手が相手なだけに、誰も非難しなかった。
むしろ、女王様。と崇め奉る始末だ。
自慢じゃないが、俺も女王様と呼び始めた一員である。
通称にまでなってくれて、感慨の極みだ。



「にしたって、羨ましいのなー…俺は抽選落ちちまったからさ」
「山本の分まで楽しんでくるよ!」
「ツナめこのやろう」
「へへっ!」




年頃の女の子らしく恋の一つもしないで、ただ「ヒバリ」さんに夢中になってた理由を俺が知るのは、
「ヒバリ」さんこと、「雲雀恭華」さんと初めて話した時のこと。
俺はもうとっくに、この人に恋してたんだ。

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