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*もう付き合ってます
*最後ちょっとえっちいかも




「あ――!!思い出した!!」


ある晴れた昼下がり。
応接室のソファーで寝転がっていた綱吉は、見回りから帰ってきた恋人の姿を視界に捉え…否、彼の持っていた模試の結果用紙を見て、そう叫んだ。
きょとんとする彼、雲雀恭弥のもとに駆け寄ってとりあえず抱きつく。
その様は、甘えたがりの高貴な猫がご主人にしか懐かない様子を思い起こさせる。
ごろごろと言い出しそうな綱吉を抱きかかえて、雲雀はとりあえずソファーに移動した。


「おかえり恭弥!思い出したんだよ、恭弥のことどっかで聞いた名前だなぁ…と思ってたんだ!それを今思い出した!」
「何だったの?」
「それ!模試!」
「これ…?」


手に持っていた結果用紙を広げてみせる。
そこに書いてある名前は、もちろん『雲雀恭弥』
全国順位は……堂々の『一位』
他者の下につくのを嫌う雲雀らしい順位である。
ついでに満点だ。
そう、雲雀もまた、綱吉に負けず劣らず天才的な頭脳を誇っていたのだった。
ちなみに綱吉も受けたが、ダメツナとして受けているので、結果は散々である。
珍しく気紛れに模試を受けた雲雀に珍しいと言うこともなく、結果を見つめて綱吉は再び叫んだ。


「あー!そうこれ、これだよ!忌々しい単独一位め!俺は一点差で負けたんだ――!!」
「……落ち着いて、何の話?」
「…一年の最初に、俺、偽名使って模試受けたんだよ。そしたら…!」
「あぁ…なるほど、その時僕に、一点差で負けたんだね」
「ピリオドさえ、忘れなければ…!」
「……随分地味なケアレスミスだね」
「まさか恭弥だったとは…」
「意外?」
「……いや、よく考えれば、俺についてこれるのって恭弥くらいだしなー。うん、どこぞの馬の骨に負けるよりは、いいかも」
「そうだね…君を負かすのは、僕だけでいい」
「…俺、も。恭弥を負かすのは、俺だけがいい」


綱吉は、潤んだ瞳で見つめて、雲雀にキスをねだる。
その様はあまりに美しく、年齢に不釣合いなほど妖艶で…雲雀は、ごくりと唾を飲み込む。
気高い獅子に囚われた自分には、それに抗う術など皆無なのだから。
雲雀だけの、美しく艶美な王。
愛しい子の体温に溺れながら、ゆっくりと顔を近づけて、唇を重ねた。
互いに目を合わせて、互いの唾液を咀嚼する。
甘い感覚が脊髄を駆け抜け、夢中になって貪り合った。
何分経ったかわからなくなったぐらいに、ようやく唇を僅かに離す。
垂れた唾液を舐め取って、雲雀の首に腕を回し…綱吉は、誘うように雲雀の名を囁いた。
いや、それは明らかな誘いだった。
常に氷のように冷え切った雲雀の瞳は、綱吉を映す時だけ甘く官能を帯びる。その熱に浮かされたように、彼に囚われて抜け出せないのだ。
否。抜け出したくない。抜け出せなくて、いい。
美しく駆ける漆黒の獣に捕まった日から、その艶なる瞳に閉じ込められ、その鳥籠の鍵は、自ら窓の外へと放り投げた。
綱吉だけの、臈たけなる幽美な王。







死が二人を別つまで。
否。
永久の別れが互いを引き裂こうとも、この獣は対岸まで駆けていく。

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