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最初から、受け入れてもらおうだなんて思っていない。
ただ、知っていて欲しかった。
それだけだった。


「う、え…っ、ひ、ばり…さんっ…好きです…おれ、あなたが好きです…!!」
「うん…」
「だいすき…っ!」
「うん…受け入れられなくて、ごめんね」


ああ。
自分はなんて幸せなんだろう。
泣きじゃくる俺の頭に、ぽん、と大きな手を乗せられる。それがあんまりに温かくて、俺はまた泣いてしまった。
ごめんね、なんて。そんなこと、貴方が言う必要はないのに。
聞こえないように言ったみたいだけど、幸か不幸か俺は聞こえてしまった。
優しすぎる謝罪の言葉。


ごめんなさい、ありがとう。
こんな俺を、受け止めてくれて、ありがとう。






「…落ち着いたかい?」
「はい…あの、すいませんでした」


結局、雲雀さんは俺が泣き止むまで待っていてくれて。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔に、苦笑とティッシュをくれた。
申し訳なくて仕方ない。
勝手に告白して、勝手に泣いて、鬱陶しいやつだと思われても仕方ない。
でも、そう思ったならさっさと出ていく人だし…とりあえずうざがられてはいないみたいだ。
ほっとため息をついて、改めて雲雀さんに向き直る。


「あの、雲雀さん…色々、すみませんでした」
「なにが?」
「その、勝手に告白して、勝手に泣いて…」
「別に。君が泣くのはいつものことだろう?」
「うっ、まあそうなんですけど」
「だったらいまさらじゃない。それに…」
「?」
「別に、嫌な気はしなかったよ。ただ、もう僕には唯一と決めた相手がいるだけで…君のことは、そういう風には思えない。それだけだ」


淡々とした、温度のない声。
それでも、その唇から紡がれる言葉はどこまでも優しくて…また目頭が熱くなった。


「はい…わかってます。雲雀さんが愛妻家なのは、周知の事実ですしね」
「なにそれ…」
「だって、ラブラブなんですもん。ね、雲雀さん…」
「……、」


「最高の失恋を、ありがとうございました」


貴方を思った十年間。
俺は、幸せでした。

優しい失恋を、ありがとう。


「お幸せに…雲雀さん」


きっと今の俺は、二人の結婚を心から祝えてるから。


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