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とりあえずあれだ。野郎同士のあれこれに恥じらいなんて無いんだと思う。
ぶっちゃけ僕はそういうことに関しては淡白な方だから下手に初々しい反応をされるよりよっぽど気が楽なわけで。
だってそうだろ。受けとか攻めとか、或いはタチとかネコとか、要するにそういう振り分けはセックスのときに突っ込むか突っ込まれるかの差であって、それ以外のときには対等の立場であるはずだ。何度も言うが、男同士なのだから。

そんなドライな自分の性格はよく解っている。
そして、そんな自分の恋人である沢田綱吉という人間はダメツナなどという不名誉なあだ名を被っているわりにちゃんと"男"でいてくれたことはとても好ましかった。


「飲むかい、」
「あ、ありがとうございます。もう喉からからで…」
「いつもより喘いでたからね」
「う、言わないで下さいよ。雲雀さんが教室なんかでやるから悪いんです」
「興奮しただろ」
「…あー、まぁ。俺も男なので、そういうスリルは嫌いじゃないです」


乱れた服を整えながら、鞄に放り込んであったペットボトルを開け、口にする。半分ほど飲んで、残りを沢田に放った。受け取って飲む彼の喉仏が咀嚼に合わせて脈動する。
あっついですねー、冬なのに。とか何とか言いながら、シャツの胸元をはたはたとはためかせる。その隙間から、僕の刻んだ赤い痕が見え隠れしていた。扇情的な光景にくすりと笑う。


「?何ですか?」
「いや…キスマーク、見えるの、エロイな、って」
「嗚呼、これ…なんか、ちょっとした優越感、ありますよね。体育の着替えのときとか、極僅かにだけ気付かれるときのあの感じ…」
「君って性格悪いね」
「今更です。俺だって知ってるんですよ、雲雀さんが、自分に好意持ってる女の子の前を通るとき、わざとキスマークをちらつかせて歩くのを」
「バレてたか」


くすりと笑う。机に腰掛け、片膝立てた上に、ついた頬杖の。掌で隠された白い首筋には、彼と同じく赤い華が咲いていた。


「ねぇ、知ってる?」
「何をですか?」
「キスマークとか、咬み痕ってね。情欲を掻き立てるんだ。まっさらな身体より、色濃く情交の後が残ってる方が、欲情させるらしい」
「へぇ…じゃあ、何ですか。貴方、キスマーク見せて、わざと女の子煽ってます?」
「色欲孕んだ眼で見られるのは嫌いじゃない。君だってそうだろ」
「否定はしませんよ、男の本能ですから。でも、恋人がそんな眼で見られるの、いい気はしません」
「だったらどうする?」
「もっと明確な、所有の証を」



がたんと机が鳴く。床に押し倒された僕の上に乗り掛かる沢田の瞳の奥に、燻ぶる欲の香を見据えて、さらに気分がよくなった。
頭上の沢田が、締め直したネクタイをはらりと落とした。露になる胸元。白に散る赤。嗚呼。

情交の痕に煽られるのは確からしい。後頭部に右手をやり、乱暴に引き寄せて唇を奪った。どうやらまだまだ、帰れそうにない。



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