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不本意ながら、俺達は骸に一つ借りがある。
昨日、うっかりあちら側の世界へと迷い込んでしまった俺達を、なりゆきとはいえ送り返してくれたのは骸だからだ。



口喧嘩から殺し合いに発展しそうになった二人を何とか止めようとしたが、双方に視線で黙殺され、どうしようかと困っていたとき、不意に骸が溜息をつき、すっと部屋の入り口を指差した。

「……?」
「…なに、随分優しいじゃない。気持ち悪いね。あちらに道を繋いであげるなんて…人間に絆されでもした?」
「勘違いしないでもらえますか、化け狐。邪魔されるのが鬱陶しいので、さっさとお帰り願おうと思ったまでです」

二人の話からすると、こういうことらしい。
彼らのような神や妖は自由にこちらとあちらを出入り出来るし、繋がった道を視認することが出来るらしいのだが、道を繋げるのは神だけなのだそうだ。
つまり、雲雀さんは道を繋げないけれど、骸は出来る。
そうして骸が繋いだ道から、半ば追い出されるように帰され…次の日、二人を見てみるとあんな状態になっていた。


追い返されただけのようにも思えるが、ただの人間があちらから無事に帰るのは至難の業なのである。
一応、お礼を言うべきではないか。
そう考え、骸の元を訪れたのだった。
が…


「は?お礼?いりませんよ、そんなもの。僕は君達のためにやったんじゃありませんから」
「そうだとしても、助かったから…ありがとう、骸」
「…変な人間ですね、君は」
「お前…それ、貶してるだろ。…と、とにかく!今度なんかお礼を渡すから!」
「だから、いりませんって………ああ、いや、ちょっと待ってください…」
「…?骸?」

お礼の品を渡すと言った俺に、骸が待ったをかけたが、そのうち思案顔になる。
何かを考えているようだったが、不意に顔を上げて俺の手を掴んだ。

「ボンゴレ、物はいりません」
「いや、だから…」
「物はいりませんが、お礼をくれるというのなら、一つ頼まれてくれませんか?」
「へ…?」


骸の言い分は、こうだった。
「僕の神社で、神楽を舞って下さい」


「はぁあああああ!!?」
「仕方ないんですよ。クロームが…ああ、クロームは僕の神社の巫女なんですがね。そのクロームが、犬のせいで酷い風邪を引いてしまいまして…このままでは神楽を舞えません」
「だ、だからって何で俺!?」
「君が一番マシだからですよ。獄寺隼人はイタリア人なので全く適正はありません。山本武は鈍感すぎて役に立ちません。よって、君が一番まともです」
「む、骸……本気?」
「ええ。本気です。本気と書いてマジと読みます。どこぞの腐れ狐と違って、僕は悪質な嘘はつきませんよ」
「拒否権は…」
「おや、お礼がしたいと言ったのはどちらです?」


コイツ…!?言質を取った!?


かくして俺は、骸の神社で神楽を舞うことになってしまったのだった。
続く!

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