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「ここの世界は向こう側。君達の住む世界の、ちょうど隣にあるような、全く正反対にあるような、とにかく、あちら側とは異なる世界。僕達妖と神々の領域」


雲雀によって連れられた妓楼の一室で、あっさりと告げられた説明に頭が混乱する。
妖?神々?
…確かに、雲雀には耳と尻尾があった。
今は自分達の見慣れた風紀委員長の雲雀の姿だが、先ほどまでの姿は確かに妖や神の類だといってよいだろう。
だが、それで、はいそうですかと納得できるわけがない。


「ふざけんなっ…どういうことか、一から説明しやがれ!!それと、てめぇのさっきのふざけた格好についてもだ!」
「そう言われても、ね…何から話せばいいかな」


ゆったりとした動作で、手に持っていた扇を置く。
学校での姿よりだいぶ落ち着いているように見えるのは、やはり彼が化生の類だあkらなのだろうか。
露骨に警戒する獄寺を見やって、ふ、と笑う。


「君達だって、怪談話や御伽噺、伝承を知ってるだろう。要するに、そういうことだよ。それのいくつかは本物ってことだ。一番わかりやすい例が、神隠しだね。あれは、あっちとこっちの境が曖昧になる暁や黄昏時に、ふらっとあちら側の存在がこちら側に来てしまう現象のことだよ。…ちょうど、今の君達のように」

「え…。つまり…今の俺達の状況って、神隠しってことですか…?」
「そういうことだね」

「えええええええ!!!!??」


神隠しとは。
まるで神がその子を連れ去ってしまったかのように、突然ふっといなくなってしまう怪奇現象のことである。
一度遭うと高確率で帰ってこれない、危険度ランク最高クラスの怪異中の怪異だ。
メジャー故広く伝わっているが、そうそう頻繁に起こるものではない。
霊感など皆無に近いため、知識程度に知っていただけだったが、まさかそれを身を持って体感することになり、なおかつそれの仕組みまで知ることになろうとは。
さすがの超直感も見抜けなかった。
いや。こんな展開、見抜けてたまるか。


「で、僕はいわゆる白狐。九尾の妖狐ってやつだよ」
「あ…さっきの、」


先ほどの雲雀の姿を思い出す。
長く白い髪に、白い着物。銀の瞳。頭から生えた狐耳と、後ろの尾。
あれが、雲雀の本性。
あれが白狐。あれが、九尾の妖狐。

寒気すら感じたあの姿を思い出し、三人が言葉に詰まる。
その時、そんな空気を壊すような声が部屋に響いた。



「おやおや…なぜここに狐がいるんです?」
「…君こそ、何でいるのさ」


「へ…む、骸…?」



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