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沢田綱吉が応接室登校になった。

そんな噂は瞬く間に学校中に広まり、ある者は制裁を受けているのだろうと喜び、またある者は可哀想にと同情した。
そのことは当然、ボンゴレの耳にも入り、どういうつもりだと問いかけてくる連中や、ようやくお前も守護者の自覚が出てきたかと喜ぶ連中を綺麗に無視し、雲雀は何事もなかったかのように日常生活を続けている。

綱吉は雲雀に低利子で借りたマンションの一室に住み、衣食方面はカードを一枚渡され、それを使っていいと言われた。
そのカードを使えば全ての使用金額が明確に記載され、記録に残るため、後にそれを纏めて支払う約束をした。
支払い期限は特に設けないと言われてなんて優しいのだろうと感動していたら「だって君、就職できるかも怪しいじゃない」と言われて本気で落ち込んだ。
いざとなったらバイト三昧で返します。何なら血判状でも書きますと頼み込んだ綱吉に、雲雀はくすりと笑った。

そのくらいの覚悟があるなら、君に手を貸そう。早く返してね。
もちろんです必ず利子とお詫びをつけて返します!

そうして二人の間の契約は成立した。
雲雀は綱吉に衣食住を提供し、風紀の問題もあるからとそれなりの保護をつけた。
それに対し、綱吉は出世払い…いや、就職払いで返す。
ボンゴレ関係の制裁は悪化の一途を辿っているため、送り迎えに風紀委員がついた。


変わらず罵倒を受ける日々に胸は痛んだが、信じたいと思う気持ちと裏腹に、もう信じられないという思いが日に日に強くなる。
頭を振って、その思いを押し殺した。

…脳内に、先日の雲雀との会話が甦る。






「そんなところで蹲っていて、何が変わるの」
「信じて欲しいと泣いて、縋って。それで何かが変わったかい?」
「誰も助けてなんてくれないよ。世の中なんてそんなものだ。」
「同情して欲しいのならしてあげる。可哀想に、って、見下して笑ってあげる」
「…可哀想に。無様だね」
「君はどうしたいの。このまま死にたいの、悲劇の主人公のようにこの状況に甘んじたいの、それとも、この状況から抜け出したいの」
「やるべきことは全てやったって?馬鹿だね、もう一つ残ってるでしょ」
「どんな手段をとるかは君次第だ、僕はそんなところまで口出ししてあげる義務も利益も何もない」


「そろそろ、自分の頭で考えたら?」
「その手で、その足で、行動しなよ」
「空想に縋るのもここまでだ」










目の前の彼らを見つめる。
大好きだった人達。守りたかった人達。
…俺を、裏切った、人達。

元になんか戻れない。今まで通りになんてやっていけない。
もう信じられない。




「…さよなら、皆」

綱吉は静かに携帯を取り出した。
「110」
ゆっくり三つのボタンを押す。


これで終わりだ。
俺への暴行の場面も、彼女が俺を陥れた場面も、皆みんなカメラに残ってる。
冷静になって考えてみれば、防犯カメラに残っていた。
傷害罪で逮捕。名誉毀損罪で逮捕。

呆気ない幕引きだった。




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