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激しく降りしきる雨の中、全てを諦めて死を受け入れた綱吉の耳にさえ、その凛とした声は明瞭に響いた。
閉じた瞼をそっと持ち上げる。
暗い夜を背景に凛然と佇むその人は、黒い傘を差し、無感情に綱吉を見下ろしていた。
冷たく冷えた瞳には、綱吉への軽蔑も憐憫も同情も宿っていない。


「…ひ、ばり…さん…」
「沢田綱吉。夜に徘徊するのは風紀違反だよ、咬み殺されたいの」


淡々とした声音で紡がれる科白は、常と何も変わりはしない。
まるで、今ここで綱吉が死にかけていることにすら気付いていない…いや、興味がないようだった。
いつもと同じ。そんな雲雀は怖ろしいことこの上ないというのに、何故か綱吉の心は温かくなった。

嗚呼、この人は。
あんなことがあった後でも、俺を以前と同じように扱ってくれる。

激変した環境。
信じていた友に見放され、守ろうとした仲間に裏切られ。
それでも。いつかきっと、彼らが気付いてくれると信じてた。だから耐えられた。
ぼろぼろになった心ではそれだけが支えだったのかもしれない。
だけど。


「死ぬなら、並盛の外に行ってくれる?ここで死者を出したくないんだ」
「で、も…も…一歩も、動けな…」
「だから何」

雲雀の言動はどこまでも冷たい。
目の前で、死にそうになっているというのに、手を貸そうともしない。


「死にたがりに貸す手なんか持ち合わせていないよ」
「…え…?」
「君が生きたいと言うなら手助けをしてもいい。借りは利子付きで返してもらうけどね。だけど、死にたがりに手を貸しても、借りが返ってこないんだから、無駄でしょ」


君は、生きたいのか、死にたいのか、どっち。



見下ろす視線はどこまでも底冷えした冷たさだった。

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