BL | ナノ




その茨に傷つけられた者は、呪いを受ける。
身体に毒が回って、いずれ同じ魔物に成り果てるだろう。






「雲の人…」
「…ああ、凪か」

村のはずれを歩いていた凪が、同じくそこを歩いていた雲雀に気付いて声をかける。
それに応えて、雲雀を振り向いた。

二人の仲を説明するとしたら、何と言えばいいのだろう。
好き合ってはいても、恋人ではない。
友人かと問われても、そうではない。
ならばただの知り合いか。
それも正しくはなかった。


「どうしてここに…?」
「ちょっとね。…君こそ、どうしてここに?最近、ここには例の薔薇が出て危ないよ」
「知ってる…。でも、最近、雲の人がよくここに来てるから…」
「……よく知ってるね。誰から聞いたの」
「…誰も。見ていただけ」
「そう…」

淡々としたローテーションの会話だが、二人の会話としては常にこのテンポで成り立っている。
二人の会話は、そこで一度途絶えた。
その時だった。


「っ…!?凪…!!」
「え?…きゃあ!!」

雲雀が凪を思い切り突き飛ばす。
ワンテンポ遅れて、先ほどまで凪がいた空間に茨が掠めた。
突き飛ばすために伸ばしていた雲雀の腕に、その茨が食い込む。

「っ…!」
「雲の人…!!」
「来るな!っ…逃げろ!」

拘束され、身体の動きが止まった雲雀の身体へと茨が絡みつく。
悲鳴を上げた凪を厳しい声で制して、乱暴な動作で力任せに茨を引き千切る。
肌に棘が擦れて、血が滲んだ。
森の奥から、薔薇の本体が姿を現した。茨が蠢く。
伸ばされた、毒を含んだ茨。
凪に向かって伸びるそれが、動けない凪の身体を咄嗟に抱きしめた雲雀の肩を、勢いよく貫いた。


「ぐっ…、」
「っ…!!」


どくり、と、雲雀の心臓が脈動した。
それは、薔薇の毒だった。

凪の意識は、そこで途絶えた。




prev / next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -