「ん、…ンッ!」
「恭弥、可愛いよ…」
普段、兄より先に寝てしまう事が多いベッドの上。
けれど、今日は一緒。
そんな幸せを身に沁みて感じながら、後孔へ埋め込まれている玩具に身悶える恭弥。
内部から受ける刺激的な快感に息を荒げながら、もうやだと強請って兄を求める。
けれど伸ばす腕も優しくシーツへ押し返されて、いつまでも玩具で悶える姿を視界に収めてばかり。
時折流れる雫をまるで愛おしそうに舌で舐め取ったり、呼吸の邪魔をするように深い口付けを繰り返す。
「や…、ぁ、も…」
「イく…?ふふっ…、これで何度目かな?ほら、言ってごらん」
「…っ、よ…かいめ…ッ」
兄の為なら…というより、愛する兄の言葉は拒否出来ない。
恥を偲んで途切れた言葉を口にすると、もうダメだとばかりに身体を震わせる。
四度目の欲は勢いも弱まり、最初こそは恭の衣服を汚していたというのに掠める事もせずただ黒のセーラー服へと滴り落ちる。
「も、やだ…っ、ちょうだい…」
「さて…どうしようかな?」
どうして、そんな訴える眼差しに恭は優しく口付ける。
「僕としては…、このまま失神した恭弥を犯すのもいいかな…なんて思ってるんだよね」
「え……、や…ッ」
「本当はそんなに忙しくないんだよ、仕事。でも恭弥に我慢させていつか誘ってくれるのをこうして待ち侘びていたのも本心…」
ぽつりぽつりと耳元で甘く響く低音のボイスに、恭弥は必死に理性を保ちながら陶酔しきった瞳で空を仰ぐ。
何を言っているのかまるで理解出来ていない、というより理解が出来ない。
「あっ、ンっ!」
ぐりぐりと玩具を奥へ押し付けられて、思わず漏れた甘い声。
鼓動は高まり、理性はぼろぼろと崩壊していく。
「僕が欲しいなら可愛くお強請りしてよ」
「あう、…やあ…っ」
精一杯の理性を崩すように容赦無い玩具の刺激が最奥を強引に突く。
そして予兆するように出し入れされるその行為に恭弥の欲求は引き摺り出される。
もうだめと言葉を漏らし、震える腕で自らの足を広げた。
「…おにい…ちゃ…」
「その手、離したらダメだからね?」
理性も矜持も全て投げ捨て、ただ最愛の兄を求める恭弥。
そんな弟に興奮を抱きつつも、冷静に玩具を抜き取り限界であった己のそれを露にさせる。
すっかり緩んだ口へ先端を押し付け、ゆっくりと、けれど強引に腰を推し進めていく。
「あ、…っ、ん」
「…ちゃんと、自分で持つんだよ」
強烈な快感に足を開かせていた腕が緩んだ瞬間、恭が阻止させて今一度膝裏を掴ませる。
そんな行為も甘んじて受け入れて、身体を震わせながら懸命に腕に力を込める。
ああなんて愛らしい、そんな感情を胸いっぱいに満たしながら最奥まで押し込んだ。
ただ、幸せ。
最愛の兄とのセックスがいくら苦痛を伴うとしても、それでもただ嬉しさと幸福感しか残らない。
痛みなんて、苦しさなんて一瞬で終わる。
一瞬で終わっているような錯覚であったとしても、それは兄と繋がっているその幸せが苦痛を掻き消してくれているに決まっている。
今までの寂しさも欲求も、たった一度の行為でこれ程までに溶かされるなんて。
もう、焦らさないで。
それだけ残して、雲雀はふっと意識を手放した。
本当は言いたい事が沢山あった。
もっと僕に構ってとか、もっと僕を見てとか、もっともっと、愛して欲しいとか。
けれどそれは、きっと言わなくてもわかっている。
行為の最中でどれだけ兄を求めていたかなんて覚えてはいないけれど、きっとその気持ちは痛い程に伝わった。
じゃなきゃ、あの人は涙なんて流さないもの。
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