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「…愚かですね」


目の前で雲雀恭弥にゴミのように扱われるボンゴレの面々に、思わず嘲笑を零した。





「テメェ…骸!何してんだ!お前は霧の守護者だろう!」
「おや、アルコバレーノ…いつ僕が君達の守護者になるなんて言いました?」
「なんだと…!?」
「クフフ…本当に愚かです、彼ほどの逸材を簡単に捨てたことも、あんな女にあっさりと騙されたことも」


思い返してみれば、無様なことこの上ない。
用意周到な嘘であったとはいえ、彼という人物の人となりを知っていればすぐに虚言だとわかるようなものを。
あんな、三大欲求より戦闘欲の勝る異次元超人が、あんな女に告白?振られた腹いせにレイプだって?
そんな報告を受けた時は、今日はエイプリルフールだったかとまずカレンダーを確認したものです。
僕は彼を好いていませんがその実力はそれなりに高く評価していますし、あんな女に靡くような男ではないとも思っています。
万一、そうだったとしても、バレるようなヘマはしないでしょう。
上手く弱みを握って、脅すくらいはしそうですねえ。

挙句、別に彼自身認可していない雲の守護者を降ろすと喚いて姫宮ユリカに譲渡。
そのくせ償いだの何だのとボンゴレに引き入れようとする始末。
…それは、彼が呆れて海外逃亡するのも当然というものです。

馬鹿には言葉より、拳でわからせるのが一番。
文字通りトンズラをこく寸前に偶然出会った僕に、彼が言った言葉。
海外で何やかんやとしているうちに、随分と強くなってしまったみたいですね。
死神だの、秩序だの、メシアだの。仰々しい呼び名が増えていますが、まさか彼が自身で"メシア"だなんて名乗ってくるとは思いもよりませんでしたが。
気持ちいいくらいに皮肉の篭もった名前ですよね、メシアだなんて。
姫宮ユリカを完全に失墜させる情報を持って、ボンゴレを滅ぼしにきたというのに。




「…ま、そういうわけで、ご愁傷様です」
「ふざけるな!骸…テメェ、全部知ってやがったな…!」
「もちろんですよ」
「なら、なんで言わなかった!もう十年も経ってんだぞ!?」

「何故と問われましてもね…まず第一に、別に僕は雲雀恭弥の味方ではありませんし、彼がどうなろうと知ったことではありません。そもそも、僕はマフィアが嫌いでボンゴレも滅ばしてやりたかったわけですから、彼のような男にボンゴレに入ってもらうと困ったんですよ。そこの無能な女の方が、よほどやり易いですから」


だから、ずっと黙っていた。
事が解決して、まぁありえないだろうが万が一にでも雲雀恭弥にボンゴレの守護者になられたらたまったものではないからだ。
彼とサシで戦って勝つ可能性は、おそらく五分五分だろう。とはいえ、彼一人を相手するわけではない。
雲雀恭弥のいるボンゴレと、いないボンゴレ。
前者は滅ぼせる確立がぐっと下がり、後者は格段に可能性が増す。おまけに、雲雀の空いた穴を埋めるのがろくに戦えない上何かと足を引っ張る能無し女。なんと理想的な状況だろう。
だから、何としても彼の無実を晴らすわけにはいかなかった。ずっと騙されていてくれと切に願う。
まぁそれ自体は彼が堂々と乗り込んできたことによって明るみになってしまったのだが、このままだと自分の思っていたよりも早くボンゴレが滅んでくれそうなのでよしとしよう。

会話もそこそこに全員を実に気持ちよくボコって満足したらしい雲雀恭弥に視線を向ける。
(普段なら僕とも戦うのだが、ここにきてようやくお互いの目的が合致したため一時的な共同戦線を張ることになった)
まぁ、あれです。
ボンゴレぶっ壊し大作戦。決行。

到着した援軍に嬉々として突っ込んでいった雲雀を横目に、瀕死の沢田綱吉に目を向ける。
疑問と、後悔と…色々なものに揺れ動くその瞳に嘲笑を零して、しゃがみ、顔を近づけた。


「…ねぇ、ボンゴレ。僕がどうしてここまで、躍起になって雲雀恭弥をボンゴレから遠ざけたかわかりますか?」
「……、ボンゴレ、を…滅ぼす、ため…」
「まぁ、大筋はそうです。でも、本来の彼の性格からしたら、僕はそんなことを気にしなくてもよかったんですよ…自由と孤高を愛する彼なら、こんな小細工をしなくても君達になんか恭順しません…けど、僕は手回しをした、何故かわかりますか?」
「……?」

「……それは、ね。彼が、君達に歩み寄ろうとしていたからですよ」
「っ…!?」


それは、一線を引いていた僕にしかわからなかったであろう変化。
他人を突っぱねるだけだった彼が、唯一譲歩の姿勢を見せた存在、それが彼らだった。
恭順はしなくとも、手を貸すくらいはするかもしれない。
そんな、いつかの未来を、僕が恐れるほどに。


「その手を振り払ったのは君達ですよ」


十年の時を経て、怖ろしく強くなって帰ってきたかつての強敵(ライバル)。
…その瞳は、以前とは違い暗く淀んでいた。
暗い喜びに満たされた瞳には、最早何者も写らない。

絶望に染まった彼らの姿に、再び嘲笑が零れた。




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