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指輪争奪戦が、始まった。
不本意なことこの上ないが、俺達は成り行きでヴァリアーと呼ばれる暗殺部隊と戦うことになってしまったらしい。
嫌だ、嫌過ぎる。俺は普通に生きたいだけなのに、どうしてこうも厄介事に巻き込まれるのだろうか。
負けたら死ぬらしいので全力で勝ちにいこうと思うが、勝ったら勝ったでボスの座を継承するのは全力で拒否しようと思う。
大丈夫だ、うん、頑張れ俺。日本には職業選択の自由がある。

そして今、獄寺君の戦いが集結した。
ぼろぼろの瀕死の状態で、何ていうか、もう…泣きたくなった。
なんでこうなったんだろう。そもそも、なんで殺し合いをしなくちゃいけないんだ?
いきなりやってきて殺し合いだんて、意味がわかんないよ。
ふざけんな。
そう怒鳴りそうになった時、ヴァリアーの部下らしき人が慌てたように現れた。


「大変です!校内に、謎の侵入者が!」
「何!?」


誰かがそう叫んだ途端、吹っ飛ばされたヴァリアーの隊員が、廊下の壁にめり込んだ。


「!!?」
「…あり?ちょっとお兄さん、もう始まってるんだけど」
「心配するな、お前の番はまだだからな。順番制なんだよ」


「か…神威さん!?」
「やっ、久しぶり」


現れたのは、以前出遭った不審者さんこと、今並盛中で一番の有名人であるだろう、神威さんだった。
普段の学ランではなく、最初に会ったときのようなチャイナ服を着ていた。
その後ろから、やけにぼろぼろなディーノさんも顔を出す。
な…何があったんだろう…。
変わらずにこにこと笑みを浮かべている神威さんだけど、その服にはおびただしい血痕が染み付いていた。
その異様な光景に、思わず後退りしてしまう。


「レヴィ隊長、報告します。我々を除き、校内に配置されていた隊員は全滅致しました」
「なに!?…貴様か、俺の部下を殺ったのは」
「弱いやつに用はないって言うのに、邪魔してきたあっちが悪いんだよ」
「よくも…!」

「っ…神威さん!!」


叫んだ声は、意味を成さなかった。
「危ないなぁ…」
そんな声が俺の後ろから聞こえてくる。はっとして、レヴィという人の方を見てみれば、肩から血を流して倒れていた。
慌てて振り返れば、いつの間にか俺の後ろに神威さんがいて、血に染まった右手に舌を這わせていた。
背筋に冷たい汗が滴る。


「凄い凄い。心臓を狙ったのに、今のを避けるなんて」
「ぐっ…!」


沈黙がその場に落ちる。
俺では目視すら追いつかない…突然神威さんが消えたように見えただけだ。
ヴァリアーの面々には、彼の動きが見えていたのだろうか。
その表情には、俺達とは違う驚愕の色が現れている。




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