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爆風が男の頬を掠めた。

獄寺の放ったダイナマイトが派手な音を立てて爆発する。
だが、それは全て神威の番傘によって遮られていた。さらりと髪が揺れて、神威が笑う。瞬間、彼の姿が掻き消えた。
それに驚愕すると同時に、顔面に蹴りが飛んでくるのがわかった。それを理解するよりも早く、染み込んだ戦闘の感覚で後ろに仰け反る。
それと同時に再びダイナマイトを放った。今度は、大きさのまちまちなものを組み合わせて投げる。
しかし、それも不発に終わる。いや、不発という言い方は正しくはなかった。
弾丸さえ弾くその番傘で爆風ごと薙ぎ払われたのだ。
それは、技術を要さぬ力押しのようで。それでいて、最低限の動きでしかなかった。
気付いたときには自分は廊下に倒れており、その上に神威が乗りかかっていた。
白すぎるほどに白いその腕が伸ばされ、指先が獄寺の首筋に添えられている。

ただ、手を添えただけ。
それでも、全身凶器と言っても過言ではない夜兎の手である。
彼がその気になれば、簡単に首と胴が離れてしまうに違いない。


「俺の勝ち」
「っ…!?」
「いつもは、このまま殺すんだけどさ。雲雀に、ここでの殺しは最小限に、って言われてるから」


そう言って、手を離す。
そしてひらりと宙を舞い、くるりと一回転して身を翻し、身体を起こした。
身軽なその動き。
足音すら立てずに着地すると、またにこりと貼り付けた微笑みを深めて、ひらひらと手を振った。


「またね」


そんな言葉を残して。
唖然とする二人を残し、彼は応接室へと消えていった。










「ご無沙汰しております、神威さん」
「あり?アンタは確か…」
「草壁です、雲雀の補佐をしています」
「ああ、そうだったね」

応接室に入り、ソファーに腰掛けた神威がけらけらと笑う。
テーブルの上に紅茶を置き、一呼吸おいて話し始めた。

「委員長から聞いているとは思いますが、こちらでの殺しはなるべく避けて下さい。法制度の発達している星ですので、厄介なことになりかねません」
「うーん…なるべくね。天人とか、あっちから殺しにきた場合はいいの?」
「その場合は構いません」
「わかったよ」
「それと…今、この学校にはマフィア関係者が在籍しています。彼らを中心に騒動が起こるかと思いますが、殺さない程度でしたら、ご自由に干渉して下さって構いません」
「あり?いいんだ?」
「ええ。委員長の望みは、彼らが一刻も早く強くなることですから」
「へぇ…」


すぅ、と、神威の瞳が開いた。危険な色を灯した碧眼が瞬く。
「楽しみだな…」
呟いた声は、風と共に流れていく。

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