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俺は、雲雀さんの姿を見かけた高台に来ていた。
見間違いじゃない、俺は、確かにここから飛び降りる雲雀さんを見た。
そっと下を覗き込んでみる。…高い。
明らかに、人が飛び降りて無事な高さじゃない。だというのに、雲雀さんは無事どころか傷一つ負っていなかったのだ。
その上、少し前に雲雀さんは学校から忽然と姿を消してしまっていた。
ただ、気になっただけだった。
ただの興味、好奇心。それだけだった。


「…あれ?」


前方に、雲雀さんがさしていたような番傘が見えた。
とはいっても、彼のとは色が違う。黒じゃなくて、紫だ。
ぼんやりと見つめていると、その人物が自分に近づいてくる。無意識に後ずさった。
それは本能だったのかもしれないし、直感だったのかもしれない。


「やっ、ちょっといい?」
「へ?あ、はい」
「並盛中学って、どこ?」


……。
番傘をさした、珊瑚のような髪をした男が、目の前にいた。
しかしおかしい。滅茶苦茶おかしい。
何がおかしいって…なんで包帯!?包帯ぐるぐる巻きなんだけど!!
怖い。めっちゃ怖い。


「…あー…えっと…」


この場合、俺はどうしたらいいんだろう。
とっても怪しい人に道を尋ねられたとき、俺は逃げるのがいいんですか。それとも、大人しく質問に答えて命の安全を図ればいいですか。


「あり?どうしたの、固まって」


おーい、とでも言いたげに目の前で手をふる不審者さん。
気付いて下さい、貴方の格好が異様なんです。
番傘は雲雀さんで慣れてるからいいとして、どうしてチャイナ服なんですか。どうして包帯なんか巻いてるんですか。
これは死亡フラグですか?


「えーっと…こっちです」
「案内してくれるの?ありがとネ」


保身に走った俺は悪くないと思う。
怪しさ満点のにこにこ笑う不審者さんを連れて校内に入ったとしても、俺は全く悪くないと思う。




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