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「要するに?お前さんは、あの神威ってやつに俺達のことを聞いて来たわけか…」
「そうだよ」
「……で?なんでテメーは普通に飯食ってんだ―――!!」
「お腹が空いたからだヨ」
「銀ちゃん、おかわり」
「神楽!テメーも乗んじゃねえ!!つーか早く出てけ!」


シリアスというものは長くはもたない。
馬鹿どもにかかれば、全てシリアルに調理されてしまう。
呑気に万事屋の椅子に座りご飯を頬張る雲雀を見て、思わず銀時が突っ込んだのも、まぁ、無理は無い。
しかも、神楽まで食べている。
冗談じゃない、これ以上胃袋拡張宇宙人を増やして溜まるか。


「帰れ、今すぐ帰れいや帰って下さいお願いします」
「食べたら帰るよ。吉原のご飯はお上品過ぎて好きじゃないんだ」
「贅沢な発言だなオイ。…ん?つか、吉原?」
「聞いてないの?今、あの吉原は神威のものだからね。実質干渉はしてないとはいえ、名前を出せば宿と飯くらい確保出来る」
「マセガキが…」
「女には大して興味ない。僕が興味あるのは、強い相手だけだ」


さて、ごちそうさま。
見事におひつ一杯を完食し終え、おもむろに立ち上がる。
傍に置いていた日除けのマントをチャイナ服の上に羽織り、番傘を手に玄関を出た。


「また来るよ、お兄さん」


にこり、と、温度のない微笑みを浮かべて、外へ出た。
笑っているのか笑っていないのか。機嫌がいいのか悪いのか。どこまでも掴めない、その雰囲気。
そして、ある程度の強者ならば、黙っていてもわかる、強者の匂い。戦場の匂い。そして。
血の、匂い。
夜兎には似つかわしくない青空の下で、彼は一人、蟲惑的な微笑を浮かべ、マントを翻して去っていった。

雲雀が出て行くと同時に、一気に気が抜ける。無意識に身体が強張っていたようだ。
おそらく彼は、こちらが気付くか気付かないかの微妙なラインで、常に殺気を送っていた。
気付いていたのは、銀時くらいだろう。
神楽は途中から食事に意識が向いていたし、新八が気付けるほど、彼との実力差は小さくない。


「…似てたネ、」
「……?」
「同じ目だったアル、アイツと…バカ兄貴と」


不意に神楽が呟いた。
その瞳は、常とは違い哀愁に揺らいでいる。
憂鬱の色を乗せて放たれた言葉に、銀時が溜息をつき、がしがしと頭をかく。
神楽の兄…神威と同じ、瞳。
それはつまり、夜兎の本能に忠実で、強さだけを求め、激しい闘争本能を有するということ。

面倒な奴がきやがったな…。

つい先ほど、自分達に向けられた仄かな微笑…だが危険な色を灯した微笑みを思い出し、再び溜息をついたのだった。

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