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その日はいつもと変わらない穏やかな日だった。
今日も万事屋は暇を持て余している。
特にすることもなくぐったりと退屈していたが、ばたばたと派手な音を立てて買い物から帰ってきた神楽のせいで、そんな退屈は吹き飛ぶのだった。


「見て見て銀ちゃん!商店街の福引で焼肉食べ放題当たったヨ!!」
「何だと!!?でかした神楽!!」
「ええ!?マジですか?」


万年金欠のここにとっては、これほどありがたいことはない。
何しろ、下手したら大の大人の十倍近くを食べる大食い娘が居着いているのである。エンゲル係数がとんでもないことになっているのだ。
たまに手に入る依頼料も、ほとんど食費に消えるといっていいだろう。
そんな現状であるのだから、彼らがこの朗報に飛びつかないわけがない。
突っ込み担当、眼鏡こと新八は、この三人で食べ放題…ああ、その焼肉屋、潰れないといいな。と若干遠い目をしたのだが、物凄い勢いで飛び出していく二人の後を慌てて追いかけた。


「ちょ…待って下さい!!」
「早くするネ!焼肉食べ放題きゃっほうーう!!」
「よっしゃ食うぞ――!!」


件の焼肉屋の扉を破らんばかりの勢いで駆け込む。空いていた席に着くと同時に、神楽が店員を呼びつけて、メニューの端から端を頼み始めた。
しかも、各十人前ずつ。店員の顔が真っ青になったのは見てみぬふりをした。
肉が机に並ぶと、そこからもまた大乱闘である。焼き上がった肉は片っ端から銀時と神楽の胃袋の中に納まっていく。


「銀ちゃんそれ私の肉ネ!」
「ばっかオメー、そこにあるだろうが!!」
「けっ、安っぽい肉なんざごめんヨ、霜降り牛よこせェエエエエ!!」
「ああああ!!俺の霜降り!!返せテメー!!」
「あーもう!二人とも落ち着いて!食べ放題なんだから、欲しい分頼めばいいじゃないですか!!」
「新八!そんなんだからいつまで経っても眼鏡なんだよ!」
「いい加減眼鏡から卒業するヨロシ」
「眼鏡関係ないだろ!!」


新八が叫んだその時。
一拍遅れで、銃声が響いた。


「…え?」





「静かにしろ!!この焼肉屋は俺達が制圧した!!」
「死にたくなかったら、大人しくしてろ!!」


「……あの、何かいるんですけど」
「ああ、多分祭りでハッスルした兄ちゃんだろ」
「ええ!?」
「最近の若者はマナーが悪いアルな」
「何普通に食事続行してんだあんたら!!」

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