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夜兎というのは、戦闘が好きだ。
それは理屈ではなく、本能で、心が、魂が、戦闘を渇望する。
戦わずには生きてゆけない。
それが当然で、それが当たり前で、それが常識であったから、全ての夜兎がそうなのだと思っていた。


「へぇ…血で戦うんじゃなく、血と戦う夜兎か」


春雨の艦体を歩きながら、雲雀が愉しそうに呟く。
隣を歩く阿伏兎は、その言葉に肯定を返しながらも、余計なことを言ったか…?と内心で苦笑する。
何の話をしていてこうなったのか、それは定かではないが、不意に話題が神威の妹に移り、神威に兄妹なんていたの?という雲雀の言葉から説明するに至った。
神威の、妹。それはつまり、星海坊主の、娘ということ。素質は十二分にある。
期待に揺らめく雲雀の瞳に、若干不機嫌そうにした神威が反論を返した。


「駄目だよ、あれは、弱い」
「ふぅん…?中々面白い発想をすると思うけどね」
「何故?」
「だって、血と戦うなんて…夜兎の本能に抗い、本能を拒絶し、本能を捻じ伏せるってことでしょ?血を誇る夜兎と、血を拒絶する夜兎…勝敗なんて決まってる。それでもそれを貫き通すってことは、相当強い自信があるってことだ」
「……そうかもしれないけど、それで負けてたら本末転倒だと思わない?ねぇ、阿伏兎」
「…ま、そうだな。途中から本能に飲まれてる、ありゃあ駄目だ、ポテンシャルは上々だってのにな」
「へぇ…」





ゆらり。雲雀の瞳が、愉悦に揺らめいた。





「ちょっと、地球に行ってくるよ」
「いってらっしゃーい」

たまたま気紛れで、話を聞いた。そうしたら、中々面白い発想をする夜兎がいるらしいじゃないか。
弱いらしいが、まぁいい。とりあえず戦ってみたい。
その信念がどこまで通用するのか、見てみたい。
そうして絶望させて、修羅の道に戻らせるのもまた一興。
とにかく、戦えればそれでいいのだ。強い相手ならなおいい。けれど、面白い相手でも興じられればそれでいい。


「じゃ、俺は地球(テラ)に行ってみようかな」





世界が交わる、その瞬間。

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