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その後、一日ほどして、目的の星へと辿り着いた。
その間も特に二人は殺し合うこともなく、まぁ、あえて言うなら力加減の下手な二人がじゃれて少々破損があったことくらいで、無事に地に足をつけることが出来た。
意図せず、安堵の息が漏れる。
だというのに、そんな自分の心境も露知らず、二人は嬉々として駆けていくのだから堪ったものではない。
標的の場所は、だいたいわかっている。事前にそれを伝えたのが悪かったのか…阿伏兎が追いつき、標的のいるとされる倉庫に辿り着いた時には、ほとんど勝敗は決まったようなものだった。

辺りに散らばる死骸と鮮血と。聞こえる怒号に断末魔の叫び。
やってるなぁ…。なんて呑気に漏らせば、後ろにいる部下が困ったような、諦めたような顔を返してきた。
だろうな。ああ、まったく。たった二人で…いや、本当は一人でも全く問題ないのだろうが、とにかくこれだけの相手をたった二人で息も切らさずほいほいと殺していくのだから、全く恐れ入るね。
自分達の仕事など、あってないようなものだ。
せいぜい、彼らに恐れおののいて運よく逃げてきた奴らを狩るくらいである。
ほら、そう言っているうちに、どんどんと数が減っていった。
あれほどいた天人の壁が脆く崩れ去り、中心で舞う二人の姿が見えてくる。

いつも通り、殺しの作法である笑顔で殺す神威と、普段と違い柔らかな微笑みを浮かべて殺す雲雀。
互いに好き勝手に周りの天人を殺していくが、少数で掛かれば敵わないと今さらながらに察知した周りが一気にかかっていくと、まるで後ろが見えているかのように同時に跳躍し、中心に降り立って、背中合わせに天人と向き合った。
何を話しているのかは聞こえない。
だが、二人の笑みが濃くなったのは見える。神威の蒼い瞳が、開いた。
同時に地を蹴る。
天人が群がった、その瞬間。
赤が、舞う。鮮血が、舞う。血の雨を浴びて、戦場を駆ける。
二人の修羅がそこにいた。





「…終わった、な」

その間、ものの数分。
言葉にして表すにはとうてい力の及ばぬ惨劇が終結していた。
数えるのも無意味な数の死骸の上に立つ雲雀と神威。全身血塗れだが、きっと全て返り血だろう。
神威の、雲雀の、手が、足が、指が、全身が。全ての生命を蹂躙し、そこに君臨していた。
何とも夜兎らしい姿じゃないか。阿伏兎は呟く。


「阿伏兎、遅い。もう終わったじゃないか」
「このすっとこどっこい…割り込んだら割り込んだで怒るじゃねーか、邪魔しないでおいてやったんだよ」


それもそうだね。
そう返した神威は、普段以上に上機嫌である。
屍の山からひらりと飛び降り、腕に付いた血を振り払う。
今回の敵が強かったのか、それとも、同胞との共闘がお気に召したのか…まぁ、両方でだろう。
神威に続いて飛び降りた雲雀も、同じように腕と番傘に付いた血を払って、満足そうに微笑んで、歌うように囁いた。


「中々よかったね」


それは結構なことで。
後ろで呆気に取られる部下に苦笑し、桁外れの二人にそう返した。

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