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「天人の殲滅?」


食事の途中、不意に神威が切り出した話題に、雲雀が口に食べ物を詰め込みながら、小首を傾げて聞き返す。
それに頷いて、近くに追加された焼魚を二口で食べ、飲み込んでからにこりと笑った。


「そう、今回の仕事だよ。なんでも、そこの天人のグループの一つが、春雨の名を騙って色々やらかしてくれてるんだって。多少ならほっといたんだろうけど、そろそろ無視出来なくなったらしいね」
「へぇ…で、第七師団が駆り出されたわけか」
「まあね、俺は基本、戦える仕事しかしないし」
「だろうね」
「それでさ、その殲滅なんだけど、一緒に行こうよ」
「僕も?」
「いいじゃないか、どうせ暇だろ?」
「…まぁね」
「じゃ、決まり」


本当に、この二人は。
仲がいいのか悪いのか。いや、悪くないことは確かだ。お互い、血の命ずるままに相手を殺そうとすること以外は、仲はいいといっていいだろう。
…いいのか?これは。
阿伏兎、そして周りの団員達は頭を傾げる。
おかしい。侵入者と団長が殺し合ったという連絡を受けていたというのに、なぜ仲良くご飯を食べているのだろう。
と首を傾げる新人から、
あー…またいらっしゃってたんですね、雲雀さん。どうりで凄い破壊音だと。
と苦笑する古株まで、様々だ。


「…阿伏兎さん、あの…」
遠慮がちに声をかけてくる団員達に、億劫そうに振り返る。
彼の口から出る言葉は、だいたい予想がついていた。というより、彼がこうしてやってくるたびに聞かれることでもある。
きっと、あの方は誰ですか?だろう。

「あの方は、どなたですか?ずいぶん団長と親密に見えますけど…」

やっぱりな。予想は大当たりだ。
今までも、この質問は嫌ってほどに聞いてきた。彼が来る時は、決して客人という形をとらない。今回のように、侵入者のように忍び込んでくるか、正面から突っ込んでくるかのどちらかだ。そして、そこがどこであろうとも気にせず殺し合いを始める、全くもって、迷惑極まりない。


「俺達の同族だよ、親殺しって知ってるか?」
「え?あ、はい…今は廃れた、俺達夜兎の風習でしたよね?」
「そう、それをあの黒い方はやっちまいやがったのさ…で、血の命ずるままに戦場をふらふらしてた時に、我らが団長様と戦って、今に至る。ま、見てわかるように、殺し合ってる時以外はわりと穏やかな関係だ」
「…ご友人、のようなものですか?」
「いいや、違うな……友人から一番遠い関係だよ」


決して、互いを向き合わない、背中合わせの関係。
互いの背中を預ける存在。

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