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「あーあ…また始まっちゃったよ…」


目の前で繰り広げられる凄まじい殺し合いに、阿伏兎は一人深い深い溜息を吐いた。
そもそも、どうしてこんなことになったのか。
それは三十分ほど前に遡る。






神威率いる春雨第七師団、通称「春雨の雷槍」は、ある任務のために遠い惑星を目指していた。
普段、仕事など全くしない神威も、相手がそれなりに名を馳せる戦闘民族であったことと、それらの殲滅であったことで上機嫌で乗っている。
最近は部下の死亡連絡も受けていない。いいことだ。
そう、油断していたのが悪かったのだろうか。

突如響く警報。侵入者だ。
そう察知するが早いか、再び爆音が聞こえてきる。
物理的で甚大な、船への被害など全く、微塵も、これっぽっちも考えちゃいないこれは、団長様のものだな。なら、一応侵入者は見つかったのか。
やれやれと肩を落とすが、ふと固まる。

おかしい。未だ、破壊音が止まない。

今までも、艦隊内に敵が侵入したことはあった。
だがそんな命知らずの馬鹿はほとんど神威にすっぱり殺されている。多少轟音が響いたとしても、五分もすれば止んでいた。
だが今はどうだ、既に十分ほど経ってはいないか。
なるほど、今回の侵入者はなかなかの強者らしい。少なくとも、あの団長と渡り合えるほど。
それは神威の機嫌がよくなるので大歓迎なのだが、これ以上争われては船が危ないと様子を見に行ったところで…阿伏兎は、猛烈に帰りたくなった。
そこにいたのは、見知った顔だったのだ。
見知ったといっても、友人というわけではない。かといって、敵でもない。


"彼"は、希少な同族だ。
そして、超貴重な、団長様と戦える夜兎だ。


ひらひらと舞う、神威のピンクがかったオレンジの髪。
さらりと舞う、漆黒。
最早周りは大破している。ところどころに飛び散った鮮血が誰のものか、あまり考えたくはなかった。
飛び跳ねる二羽の兎。兎などと呼ぶには、あまりにも凶暴な、それでも愛らしい容貌の二人がにこやかに笑いながら殺し合っていた。
端には、最初こそ使用していたものの、すぐに面倒くさくなって放り出されたと伺える二つの番傘が転がっている。
ああ、全く。



「とんでもねえお客さんが来ちまったもんだ…」



はてさて、どうやって止めようか。

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