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それは仄かな疑問だった。



「…そういえば、何で雲雀さんっていつも傘さしてるんだろ」


退屈な昼過ぎの授業中、ふと見下ろした先には最近よく見かける人影が立っていた。
雲雀恭弥。
この学校の風紀委員長であり、あのリボーンにさえ、底知れない奴だ、と言わしめた存在。
彼について俺が知っていることといえば、彼が風紀委員長だということ、デタラメなまでに強いこと、それから、いつも黒地に紫と藍の模様が入った、番傘をさしていること。あとは、そう、肌が透けるように白いことくらいだろうか。
四つのうち、二つは別におかしくはない。
風紀委員長は誰かがやることだし、肌が白いのも、体質だろう。
ただ、あの強さは一体どういうことなのか。一度強制的に戦わされて、喧嘩なんてしたこともない俺ですらすぐにわかった。
ああ、違う、と。
こんな性格であるから、不良に絡まれたりすることはよくあった。怖い目にも散々あってきた。けれど。
違う、彼の強さは、そんなんじゃない。芯から冷やされるとでもいえばいいのか、そう、本能が警鐘を鳴らすような、そんな冷えた強さがある。
俺はあの人が怖かった。
だけどそれでも、彼は恐ろしく目を引く存在でもある。圧倒的な威圧感もさることながら、それよりも先に、彼がいつも、肌身離さず持ち歩き、なおかつ常にさしているあの番傘も理由の一環であろう。
日光に弱いらしいという噂は聞いていた。けれど、あそこまでいくと疑わしくもある。
人間が、そんなに日光に弱くなるのだろうか。
そんなことを考えながら、ぼんやりと彼を見つめていた。

そして、休み時間になるのを待って、獄寺君や山本に尋ねてみる。
けれど二人からも、有益な回答を得ることは出来なかった。





そうしているうちに、時間は過ぎて、放課後になってしまう。
二人とも、今日は用事があるらしいので、久しぶりに一人で帰宅した。
のんびりと歩いているうち、不意に昼間も見かけた番傘が視界を掠める。雲雀さんだ。
何をしているんだろう…。少し、気になってしまった。
普段なら怖くて逃げ出すのに、一度気になったことはひたすら頭を駆け巡り、出て行ってはくれそうにない。
それに、ちょうど俺の進行方向だった。
後をつけるわけじゃない、俺の行き先に、たまたま雲雀さんがいたんだ。
そんな、言い訳を作って。
俺は、雲雀さんを追いかけた。

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