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雲雀が姿を消した。
そんな噂が流れてきたのは、沢田綱吉への虐めが始まった頃だった。


きっかけは一人の転校生。
身体が弱く、空気のよい並盛に養生しに引っ越してきたのだと言ったその少女が、始まりだった。
病気がちで学校を休むことも多かったが、その穏やかな性格からそれなりにクラスにも溶け込んでいたその子が言った一言が、全てを変えたのだ。


「…え?田中君の家、壊れちゃったの?…そういえば、その日の夜、沢田君たちが歩いているのを見た人がいるって…」


それは嘘ではなかった。
最近起こった虹の代理戦争…その際に、戦闘の余波として、壊されてしまったのだった。
今までも、起こった騒動、特に爆発騒ぎだのなんだのといった件について、完全に巻き込まれという体制ではったが、中心人物は沢田綱吉であった。
ここに来て、住人達の溜まりに溜まった不満が爆発した。


「やっぱりお前のせいかよダメツナ」
「最低だな、お前」
「つーか弁償しろよ!俺んち、父さん病気で、家直す金なんかねーんだよ!」
「うちも壊れたよ!前の騒動で!あれもどうせお前らの仕業だろ!?」


怒りの矛先は、全て綱吉に向かった。
綱吉は、それを否定できなかった。不可抗力とはいえ、それは事実であったからだ。
とはいえ、その賠償金など、一介の中学生である彼らに支払えるわけがない。
それでも、それはただの言い訳にしかならなかった。
お金がないから許して欲しい。では、どうしろと言うのか。勝手な騒動に巻き込んで家を破壊しておいて、自分達で直せというのか。
己に向けられる敵意の視線に、無意識に身が竦む。
傍にいた獄寺が綱吉を庇うが、何においても綱吉至上でしかない彼の言葉で、その場が収まるわけがない。むしろ、事態を悪化させるだけにしかならなかった。
こうして、並盛の街全体にその話は広まり、住人から冷たい目を向けられ、会うたびに弁償しろと迫られる日々が始まった。


転校生の少女は、彼らの怒りを煽っただけであった。
誰が首謀者なのか、教えただけだった。


ボンゴレは気付かない。
無垢な少女が発したその一言が、全て計算尽くであったということに。
それが嘘であったならば、偽りであったならすぐにわかっただろう。
ただ。彼女が告げたことは、真実だった。
事実、彼女は本当に綱吉達を見かけていた。その情報を手に入れ、全てが偶然であったと仕向けるために、その場に居合わせていた。
そしてそれを教えた。その後も、住民達の怒りが増長するような情報ばかりを的確に告げていく。けれどそこに不審な点はない。上手く偶然を装っていた。







「…そう、わかった」

遠く離れた南の島。
砂浜で寛ぎながら、雲雀は並盛の現状を携帯で伝え聞く。

「上出来だよ。後は、彼らを上手く追い出してくれればいい」





ボンゴレは知らない。
少女の後ろで、彼らのジョーカーが糸を引いていることを。








首切り女王
(処刑しておしまい!)




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