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「そういうわけだ、晴のアルコバレーノ。今日から、アッロードラと交際するのは、デーチモではなくオレになったからな」
部屋にリボーン一人のみがいるときを見計らって、綱吉が置いていったボンゴレリングの中から、初代ボンゴレボスことジョットがその姿を現した。
驚くリボーンに、彼は手短に挨拶を済ませてから、本題に入るが…と、目的の話題に移行した。自分が雲雀を好いていたこと、彼も告白に応じてくれたこと、そして、雲雀と元恋人である綱吉が別れる原因となったことについて。
全て、とはいかないまでも、大多数を、包み隠さず、告げた。

「デーチモは、アッロードラを傷つけた」
「貴様は、愛する相手が傷つけられていくのを、黙ってみていられるのか?」

リボーンも、綱吉に好意を寄せていた一人だった。綱吉の優しさは美徳だと思う。優しすぎるのが玉に傷だとも思うが、全てを包み込む大空と呼ぶに、あまりに相応しいとも思う。他人を傷つけることを何より嫌う、あの優しい子供が、一体どうして雲雀を傷つけたというのだろう。

「…優しさが、いつも正しいとは限らない」
「覚えておくといい。優しすぎることは、弱いということだ」
「何もかも捨てられないのであれば、いずれその手から全てを取りこぼすだろう」

優しい子供。確かにそうだろう。彼は、どこまでも優しかった。彼は優しい、お人好しだった。皆、そんな彼が好きだった。彼を愛していた。
全てに優しいというのは希少な美点で、それはとても尊くて。そんな彼だから、皆、惹かれた。それでも。

「だが、それは恋愛とは違う」

全てに優しくて、全てに平等で。だけどそれでは、恋愛は成り立たない。綱吉は、切り離すべきだったのだ。優しさは全てに平等であったって一向に構わない。それこそが彼の魅力の一つでもあるのだから、無理に止める必要は一切ない。
だけど、だからといって、恋人と他人を一緒の扱いにしたのでは、そこに愛を感じられなくても無理はないだろう。彼は自分に、どこまでも優しくて。それでも、その優しさは、他人に対するものと全く同じ。だから、こう思う。…彼は、誰でもいいのだと。

愛していると言えばよかったのだ。愛していると示せばよかったのだ。それもせずに、愛されるだけでいようだなんて、あまりにおこがまし過ぎる。
ジョットは言う。「オレは、アッロードラを愛している」同じ土俵に立って争いたいのなら、まずは愛す努力からし直してこい。








おまけ

応接室は、以前にも増して騒がしい空間と化していた。といっても、むやみやたらと騒ぎ立てるような人間は、ここ最近滅多に訪れていない。騒音の原因は、珍しくも部屋の主である雲雀自身である。始まりは、似たもの同士の二人の会話からだった。「そういえば、貴方、初代最強って言われてるんだってね」「そうだね。ジョット程度なら、軽く捻り潰せる自信はあるよ」「いいね…最近、咬み殺し甲斐のない奴ばかりで、飽き飽きしてたんだ」貴方、戦ってよ。その言葉と共に、目視が追いつかないほどに速さで、アラウディに殴りかかる。だが、その一閃も、アラウディは軽々と受け止めていた。「まだ弱いよ」「…うるさい」それが合図となり、双方が後方へと飛び退く。そこからはもう、言葉のない戦いだった。雲雀が殴りかかるトンファーを手錠で受け止め、遠心力を利用して反対側へと投げ飛ばす。身体が浮いたのに追い討ちをかけるようにして、その華奢な身体を思い切り蹴り上げた。後方へと吹っ飛ぶ雲雀の身体、しかし、彼もまた綺麗に蹴りの威力を流しており、その反動を利用して再びアラウディに殴りかかる。またも、手錠で塞がれる。と、思った瞬間、身体を思い切り捻って、ガードの隙へとトンファーを叩き込む。そして、先ほどのお返しと言わんばかりに、強烈な蹴りをお見舞いした。だが、アラウディの身体はふらつく気配もない。逆に、雲雀が後ろへと飛びすざった。それを追いかけ、再びアラウディが殴りこむ。飛ばされた雲雀の身体は、所々歪に歪んだ執務机を巻き込み、派手な音を立てて床に倒れこむ。勝敗は決まった。


「…アラウディ、」
「なに、ジョット」
「また随分と派手にやったな、片付けに骨が折れる」


のんびりとそう言うジョットの傍から、倒れこんだ雲雀がゆっくりと起き上がった。綺麗に受身を取ったせいで大した怪我はしていないものの、軽い打撲はそこかしこにあるだろう。何も言わない彼を見て、若干心配になったのか、もしくは、その程度だったと嘲笑ったのか、…おそらく後者だろうが、アラウディが挑発的に笑った。
「なに、一瞬で負けて、自信が折れた?」
答えは、ない。一瞬の間を置いて、雲雀が静かに笑い始めた。
「……ふふ、」「……」「…いいね、そうこなくちゃ」顔を上げて、舌なめずりをするその表情は、まさしく飢えた肉食獣。「それでこそ、咬み殺し甲斐がある」ああ、なんて、美しい。闘志の塊のような雲雀のその姿は、若かりし頃のアラウディを彷彿とさせるものがある。やはり、二人はどこまでも似ていた。
「…君も、鍛え甲斐がありそうだね」…獣が二匹いるな。そう呟いたジョットは、楽しそうに二人の戦闘を見守っていた。


ちなみに、彼の元を訪れるのは、何もこの二人だけではない。
「よう、アッロードラ」現れたのは、赤髪の青年。頬の刺青のせいで、若干顔が悪人面になっているのはご愛嬌だとのジョットの言葉だ。
「…G、」意外にも律儀な彼は、煙草を吸う時は部屋から出て行ってくれている。そして戻ってきたら部屋は残骸と化しているという惨状で、とりあえず彼は現実逃避に挨拶をしたのだった。「アラウディ、アッロードラ、部屋を壊すなと何度言えば…」溜息交じりにそう呟くも、当人達には全く聞こえてはいない。何をしているんださっさと止めねぇかこの馬鹿やろう、と内心悪態をつきながらジョットの姿を探せば、彼は楽しそうに恋人の勇姿に釘付けになっている。
駄目だこいつら。そう自己完結したGは、最後に長い溜息をつき、もう開き直って、彼らの騒ぎの中に身を投じたのだった。
「アッロードラ、銃も使ってみる気はねぇか?」「…やる」そうしてまた、部屋の残骸が増やされていくのだが、誰も先のことなど考えもしなかった。




おまけ2

「九代目…一体何事ですか!?そんなにやつれて…!」
「家光…いや、心配しなくても、病気ではない。ただちょっと……寝不足でな」
「は…?寝不足?」
「先代が…」
「…先代というと、八代目ですか?」
「そうだ、その八代目が……毎夜毎夜夢に現れて、一晩中いたくお気に召したらしい雲雀君談義を……」
「……九代目…」(憐れみの視線)




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