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校門に駆けつけると、綱吉と六道がキスをしていた。「……どういう状況?」呆れて何も言えない。僕に会いに来るとかはしないし、それでいて、何をしているのかと思えば、六道との密会。必死になっていた自分が馬鹿みたいじゃないか。
もちろん、彼が別に六道を好きというわけじゃないのはわかっている。いや、もしかしたらそういう気持ちがあるのかもしれないけれど、今のところそういった疑いは持っていない。だけど、気分が悪いのは仕方ないだろう。目の前で、恋人が自分以外とキスなんかしてて、冷静であられる人間がいたなら出てきて欲しい気分だ。
思わず、目の前にある六道の頭に向かって殴りかかる。当然のことながら、苛立ちに任せた単調な一閃はひらりとかわされてしまう。無意識に舌打ちしてしまった。
その攻防戦の間に、ようやく綱吉が気付いたらしかった。慌てたように真っ赤になった顔を隠して、あの、そも、と言葉を探している。その様子すら、今は不快感を煽る材料にしかならない。
どうして拒絶しないの、とか、どうしてそんなに赤くなっているの、そんな苛立ちばかり溢れてくる。僕の心情を見越して、クフフと笑う奴も気に入らなかった。
やっぱり一発くらいは殴ろう、そう思って手にした武器を振りかぶった時、腰に衝撃が走る。真っ赤な顔のまま、綱吉が抱きついていた。


「待って下さい、雲雀さん!」
「離せ、一発くらい殴ってやらないと気が済まない」
「止めて、骸を殴らないで下さい…!」


「どうして止めるの!」思わずそう、叫んだ。「骸は、俺達の仲間です!暴力じゃなくて、ちゃんと話し合って下さい!」その言葉に、持っていた武器を下ろした。
彼の言葉に納得したわけじゃない。むしろ、その逆だった。怒りとか、悲しみとか、そういった予測されていた感情は全く浮かんでこず、ただただ不快感ばかり募る。それと、若干の空しさだった。いや、若干というのは語幣があるかもしれない。僕の中で、急激に気持ちが冷えていくような気がした。
あぁ、なんだ。そうだったんだ。
妙に納得のいく感情も浮かんでくる。僕が来たのに気付かず、ただ六道にされるがままになっていた綱吉を、そして、僕より六道を庇う綱吉を見て、納得してしまった。
誤解も偏見も甚だしい。でも、どうしてか納得してしまった。


彼は、僕以外でもいいんだ。


そう思ってしまえば、どこか気持ちが楽になった。ズルイ、逃げ道だった。ごめん、もう、駄目だ。
急に大人しくなった僕を見て、綱吉も六道も、不思議そうに見つめてくる。それさえ、もうどうでもよくなっていたのだ。
僕等は、恋人だった。なのに、彼はいつもいつも、周りの取り巻きのことばかり。他人にキスされても、その相手のことばかり心配して。
ねぇ、綱吉。そう呟いたはずの言葉は、空気に溶けて消えた。
「僕は、君にとって、何。」今度は、きちんと言葉になったらしい。それでも、自分でも信じられないほどに小さく消えそうな声だった。「う、え…!?え、えっと…」再び、綱吉が口ごもる。最後に、君から聞きたかった。「君は、僕のことが好き?」六道は、黙っている。いつもと違った雰囲気に、聡いあの男は何か察したのかもしれない。「す、好きって…!あ、あの…その…」この質問にも、彼は答えてくれはしない。そういえば、好きって言葉も、いつも僕からだったね。キスも、何もかも、全部僕から。それは、本当に恋人なのだろうか。


「…そう」それだけ言って、僕は、彼らに背を向ける。常なら綱吉も引っ張っていっていたが、今日は一人だった。「さよなら、綱吉」その言葉に、たくさんの意味が込められたいたことに、彼は気付いたのだろうか。





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